鳥山明 “かつての敵”が“味方”になるアツさ。40代をいつでも少年に戻してしまう『DRAGON BALL』に寄せて
公開日:2024/5/20
2024年3月1日、漫画家・鳥山明氏が永眠した。享年68歳。世界中の“少年”たちを熱くさせてくれた偉大なる漫画家“鳥山明先生”が“もうこの世にいない”とは、いまだに信じられない。
40歳の本稿筆者も、鳥山明先生の作品に熱くなった少年時代がある。なかでも、語るのに欠かせないのは『DRAGON BALL』だ。小学校から中学校にかけては『週刊少年ジャンプ』の全盛期で、毎週の発売を待ち望んでいた。
水曜19時には、アニメ版を見ようとテレビに食らいつき、激しく悟空たちの戦いを見守っていた日々。一時、アニメEDに使われていた影山ヒロノブさんが歌う曲『僕達は天使だった』をエンリピしながら本稿を書いている今も、僕の心は自然と“少年”に戻ってしまう。
作品内で、悟空は仲間と共に様々な敵と対峙する。亀仙人の下で、クリリンと共に修行をして天下一武道会へと挑んだ少年時代を経て、ドラゴンボールにより世界征服を狙う“レッドリボン軍”を壊滅させようとする辺りから、ヒーローとしての悟空が強調されはじめる。
以降、クリリンの死を前にした悟空が、元凶となったピッコロ大魔王と対峙した“ピッコロ編”からは、敵とのバトルが加速。なかでも、筆者を特に熱くさせてくれた展開が、かつての“敵が味方になる”という物語の構図だった。
例えば、悟空に倒されたピッコロ大魔王の卵から生まれた“マジュニア”ことピッコロは、その筆頭だ。
地球に訪れた“サイヤ人”に脅威をおぼえ、ライバルであったはずの悟空との共闘を決意したピッコロ。悟空の息子である悟飯との熱い“師弟関係”もあり、サイヤ人の1人であるナッパのエネルギー弾から、悟飯をかばい命を落とすシーンは、思い出すだけで泣ける。
いわゆる“サイヤ人編”以降、悟空にとって“1番のライバルポジション”を得る、ベジータも欠かせない。
当初は、宇宙を行く悪の帝王であるフリーザの部下として地球に降りたが、共にサイヤ人である“カカロット”こと悟空と“人造人間編”以降は、共闘。惑星ベジータの王子としてのプライドもあり、永遠に強さを超えられない悟空へのコンプレックスを抱え続けるのは、ベジータならではの哀愁だ。
ただ、ベジータの陰で、少年時代から悟空と時間を共にしてきたヤムチャも特筆しておきたい。
かつて恋人だったブルマの“パートナー”としてのポジション、悟空のライバルとしてのポジションをベジータに奪われてきたのは、ヤムチャの“噛ませ犬”感を物語る。挙げ句、道中の“サイヤ人編”ではサイバイマンの自爆によって殺されるなど、悲惨な目に遭ってきたその境遇は、いつまでも愛をもってイジりたくなる。
と、ヤムチャは余談だったが…。数多くの人気作品を生み出してきた『週刊少年ジャンプ』では、敵が味方になる展開で物語を盛り上げる作品が多々ある。2023年末にNetflixで実写版の配信もスタートした『幽☆遊☆白書』の飛影、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の月岡津南、『ONE PIECE』のクロコダイルなど、以降の“ジャンプ作品”に影響を与えたはずだ。
そういえば以前、飲み屋でふと出会った年下の方と、初対面にもかかわらず『ドラゴンボール』の話題で数時間盛り上がった経験があった。世代を超えて、作品が愛されているんだと実感したものだ。これからも『『DRAGON BALL』』をはじめ、鳥山明先生の作品への話に華を咲かせていきたい。
文/カネコシュウヘイ