おすすめ本は江夏豊さんに聞いている 掛布雅之さんの愛読書とは【私の愛読書】

文芸・カルチャー

公開日:2024/5/31

掛布雅之

 俳優やタレント、経営者やスポーツ選手など、さまざまなジャンルで活躍する著名人にお気に入りの一冊をご紹介いただく連載「私の愛読書」。今回ご登場いただくのは、「伝統の一戦」の魅力を語りつくす新刊『虎と巨人』をこのほど刊行した掛布雅之さんだ。

 1985年に不動の4番・三塁として球団初の日本一に貢献し、“ミスタータイガース”の愛称でもファンに親しまれた掛布さん。引退後はプロ野球の解説や講演で全国を駆け回っている。

 読書するのは、そんな仕事の移動の新幹線や飛行機の中。読む本に困ったら「実はすごい読書家」と掛布さんが尊敬する、元プロ野球選手の江夏豊さんにおすすめしてもらっていると言う。

 スポーツのノンフィクションも読むが、リラックスして読めるものが好きだと言う掛布さんに、小説など3冊をご紹介してもらった。ぜひ本選びの参考にしていただきたい。

掛布雅之

『破門』黒川博行

掛布雅之(以下、掛布):江夏さんに勧めてもらった一冊です。黒川さんの単行本はほぼ読破したと思います。

破門
破門』(黒川 博行/KADOKAWA)

 特に「疫病神シリーズ」が大好きで、一番のお気に入りが直木賞受賞作のこの作品。大阪を舞台としたハードボイルドで、実際の地名が出てくるので描写が絵のように浮かんできて、ページをめくる手が止まらなくなるんです。

僕は新潟で生まれて、高校まで千葉で育ちましたが、今ではすっかり大阪人になったと思っています。東京で仕事をして大阪に戻ると、「帰ってきた」と思うほどですから。だから黒川作品の大阪弁の会話が心地良いのでしょうね。

『トヨトミの野望』梶山三郎

掛布:阪神の監督を応援する講演会があるんですが、名古屋で食事する時にトヨタの関係者がいたんです。その方に『トヨトミの野望』という本がすごい面白いよ、と勧められたんです。

トヨトミの野望
トヨトミの野望』(梶山三郎/小学館)

 実際にあったようなお話で、あっという間に読んでしまいました。「あの人物は、あの人なんじゃないだろうか」みたいな想像を巡らせながら読めるので、すごく面白かった。

 続編の『トヨトミの世襲』もすぐに読んてしまうほど、本当にハマりましたね。

『夜光虫』馳星周

掛布:この本は野球賭博の話。台湾のプロ野球の取材という仕事がありまして、「台湾の裏側のいろんなものが見え隠れしているから、行く前に読んでおいた方がいい」と、勧められて読んだ一冊です。

夜光虫
夜光虫』(馳星周/KADOKAWA)

 台湾人の野球選手と現地で取材を行い、その後食事をした際に、本の中にある八百長に関する話が本当にあるのか聞いてみたんです。そうすると実際にあると言っていたので本当にびっくりしました。

 馳さんはものすごく取材する方だそうで、ほかの著書も何冊か読ませてもらいました。

取材・文=日高ケータ、写真=松井ヒロシ

掛布雅之

<第49回に続く>

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