「いくらなんでもやりすぎでしょ!?」義母の度を過ぎたお節介。子どもを見てもらっている手前言い出しにくいが…
公開日:2024/7/24
「母親ならこれくらい普通でしょ」「女性なら当たり前だよ」というようなことを言われた人は多いだろう。そもそも“普通”とは何なのか。その言葉の裏には「価値観の押し付け」があるような気がしてならない。
『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(龍たまこ/KADOKAWA)では、そんな“普通”に思い悩む母親の姿が描かれている。主人公と同じように“当たり前”や“普通”という言葉に対して思い悩んだ経験がある人には、ぜひ読んでもらいたい作品だ。本作を通して、母として妻として、ひとりの女性としての幸せとは一体何なのかを考えてみてもらいたい。
主人公のあかりは、夫の平太と娘の未来と3人で平凡ながらも幸せに暮らしていた専業主婦。しかし、夫の実家の敷地に新居を建て、義家族との敷地内同居がはじまったことで、母親や妻としての当たり前に思い悩むように。過干渉な義母に化石かと思うほど古い昭和の価値観を押し付けてくる義父、そして世間からは見えない圧力を感じて少しずつ疲弊していく。
義父は「男は稼いでなんぼ」という時代錯誤な価値観を持ち続けている。ことあるごとに「昔の日本は~」だとか「女の仕事は~」などといわれると、本当に嫌になるだろう。離れて暮らしていれば年に数回の我慢で済むかもしれないが、敷地内同居だとそうもいかない。ドン引きしながらも苦笑いでやり過ごすしかないあかりに、心から同情してしまう。
そもそもあかりは家事が得意ではなかった。だからこそ、真面目で優しい夫と一緒に協力しながら生活してきたのに、義母はそんなあかりに対し、モヤモヤを募らせる。どんな価値観を持とうが自由なのだが、それが当然なのだと押し付けられるのは地獄だろう。同じ敷地で暮らしているからといっても、義実家とあかりたちは別世帯なのだ。我が家のことは自分たちでできるのだから義母には干渉しないでほしいのに、少しでも目につくことがあれば勝手に手を出すようになっていく。そんなしんどい義母との関わりを減らすべく、あかりは専業主婦を辞めて働きはじめることに。
社会人経験の少なさや子どもの預け先のなさなど、なかなか柔軟に働けないデメリットを乗り越えて魅力的な職場で働きはじめたあかり。「家にいるより全然楽しい!」と笑うあかりの姿を見ると、家庭を守ることだけが女性の幸せではないのだろうと思わされる。今までは毎日家にいたあかりが働きはじめたことで、惣菜の頻度が増えたり食器が溜まっていたりと家事がおろそかになっていく。
そんなあかりの笑顔の裏で、夫は出世のかかった仕事を抱え心身ともにボロボロになっていた。頭はボーっとして疲れていても眠れず、食欲もない。それでも大黒柱として家族のためにがんばろうとどうにか踏ん張っていたのだが、大事なプロジェクト発表会で過呼吸になり倒れてしまい— —。
夫が倒れたことで家庭崩壊の危機を迎えたあかりは、この先一体どうなってしまうのか。リアルすぎる展開に続きが気になって、思わず目が離せなくなってしまうだろう。「男は仕事、女は家庭」という価値観に悩んでいる人は、あかりの選択や決断にきっと勇気をもらえるはずだ。
あかりや夫だけでなく、義母と義父の価値観や幸せについてもそれぞれの視点で描かれていくので、ぜひ最後まで見届けてもらいたい。