「宝くじ」は最も効率の悪いギャンブル!? 認知バイアスの罠
公開日:2024/6/27
仕事、恋愛…日常のあらゆる場面で必須になってくる「対人スキル」。
自分がもっとコミュニケーション能力が高ければ、人生楽だったのにな…。そんな諦め気味な皆さんにオススメしたいのが『人生を1時間でチート化する 対人スキル20』です。
男性脳と女性脳の違いは? 宝くじや福袋は本当に得できるの? 口癖にパーソナリティは表れる?
こういった興味深いテーマを取っ掛かりに、「世渡り」のための必須テクニックを紹介してくれる本書。
あなたの人生を180度変える全20スキルの中から、今回は選りすぐりのトピックスをお届けします。
何かと忙しい現代社会を生きる皆さん、人生を「チート化」してみませんか?
※本記事は『人生を1時間でチート化する 対人スキル20』(神岡 真司/ワニブックス)から一部抜粋・編集しました
SKILL13 「人生の浪費」で絶望しないためのスキル
「宝くじ」と「福袋」に群がる人たちの心理
ここでのテーマは、宝くじや福袋を買う人たちの「不思議な認知バイアス」についてです。宝くじや福袋が人生の浪費と関係が深いのは、「夢」や「希望」をチラつかされて、財布の紐を緩めてしまう、つまり騙されていることに気が付いていないことが問題なのです。まずは「宝くじ」のカラクリから見ていきましょう。
宝くじ全体の売上額は、2005年度に1兆1千億円のピークをつけて以降、減少傾向です。2017年度には過去最低の8千億円割れも記録し、翌年18 年度に8046億円まで持ち直し、2022年度には8324億円とほぼ横ばいが続いています。
宝くじは、お手軽な価格で楽しめる「庶民の夢」ですが、1枚300円のジャンボ宝くじの当せん確率は1千万分の1で、生涯のうちで落雷で死亡する確率と同じだそうです。
10枚3千円分購入しても百万分の1の当せん確率です。お手軽な価格ですが、ものすごく当たらないことがわかります。
しかし、宝くじは買わないと絶対当たらないからと、これを100枚3万円分、300枚9万円分も買う人がいるので驚かされるのです。なぜでしょうか。
人は不合理でも自分に都合よく考えて行動する
つまり、人は次のような認知バイアスに支配されやすいからなのです。
●「感情バイアス」……他人は当たらないが、自分だけは当たりそうな気がする
●「確証バイアス」……高額当選者は長く買い続ける人という都市伝説を信じる
●「正常性バイアス」……3時間毎に1千万円当選と聞き自分の行動も正常と思う
●「喪失不安バイアス」……毎回買わないと、これまでの行動が無駄になると思える
●「集団同調性バイアス」……多くの人が買うので自分にもチャンスが巡ると思える
●「正当化バイアス」……ツキの時多く買い、ツキなし時はツキある人に買わせる
●「アンカーバイアス」……運の悪い人が当たると自分にもチャンスが巡ると思える
こうした認知バイアスに突き動かされた人たちが宝くじを買い、当せん発表日まで、ワクワクしながら夢を見るわけです。そして当せん発表日に、がっかりするのです。
しかし、そんな悔しい思いの時でも、「まあ、宝くじに当たって不幸になる人も多いから、当たらなくてよかったのかも…」などと自己正当化までしてしまいます。
「宝くじ」は最も効率の悪いギャンブル
2022年度の宝くじの売上8324億円のうち、当せん金はたったの46.9%(3904億円)しかありません。
残りの53.1%のうち、地方自治体などに36.7%(3052億円)が建前上分配されますが、そのうちの1割程度は総務省傘下の公益法人が100団体近くもぶら下がっており、そこに総務省役人が天下って高給を貪る構図になっています。地方自治や社会貢献を謳っているものの、本当は総務省OBの楽園が築かれています。繰り返しますが、宝くじは、配当率がたったの46.9%しかないのです。他の公営ギャンブルと比べると非常に見劣りします。競馬も競輪も競艇もオートレースも約75%もの配当率だからです。民営のパチンコは約87%です。騙されてはいけないのです。
次に、「福袋」のカラクリについても見ておきましょう。
「福袋」はおトクな商品ではない
年始の初売りシーズンには、百貨店や専門店などで、「福袋」が売られます。
日本人が、福袋に魅力を感じる一番の理由は「福袋自体の価格よりも中身の品物が高額だから」ということが刷り込まれているからです(アンカーリング効果)。
「5千円の福袋を買ったら、2万円分の商品が入っていた」という喜びが期待できるからこそでしょうが、消費者に「おトク」と思わせ、とにかく購入を促進させる巧みな価格戦略になっています。近年では、「中身の見える福袋」というのも登場して人気です。何が入っているかが、わかったうえで買える福袋なら、「おトク」感も抜群だからです。
5千円の福袋の中身の商品が、2万円分の商品だったとしても、消費者にとっては1万5千円分トクをしたとはいえません。
2万円というのは商品の上代価格であって、真実の価値や価格ではないからです。
「好きなブランドの商品であれば、何でもうれしい」という人にとっては、コレクションが増えて喜ばしいかもしれませんが、福袋に詰められる商品には、売れ残りの在庫処分としての意味合いのほうが強く、廃棄処分予定品ならゼロ円価値です。
本当に自慢できる人気の商品であるならば、福袋のように、外から中身が見えない商品にしたりする必要がないからです。
高級ブランドは「ヴェブレン効果」がはたらき高額ゆえに売れる
福袋戦略と似た商法には、アウトレットモール商法があります。
高級ブランド品は、「高額なブランド品を身に着けている私」という自己拡張心理が味わえ、高額品を所有している「見せびらかし」の優越感に浸れ、自己顕示欲が満たされます(顕示欲求=ヴェブレン効果)。そんな消費者の幻想に支えられているので、高級ブランド品は、中古市場でも存在感が保てます。
こうした消費者の幻想を裏切らないために、都心の一等地にある高級ブランドショップでは、「安売りセール」は一切行いません。ゆえに、ブランドショップが集積した不便な地のアウトレットモールで安売りし、消費者に「トクをする」と思わせています。
コストパフォーマンスの悪い高級ブランド品
ところで、こうしたアウトレットモール業態が誕生したのは1980年代の米国でした。はじめはブランドメーカーの工場の一角で、訳アリ商品などを細々と売る形態からスタートし、次第にブランド品店舗を集積させた在庫処分の戦略拠点として発展させ、今ではアウトレットモール専用商品までも揃えて売っています。
しかし、高級ブランド品は、決してコスパのよい商品ではありません。
なぜなら、高級ブランド品とそっくりで、精巧に作られた偽物ブランド商品が、非常に安く売られているからです。本物ブランド品の半分以下の価格でも、本物と見分けのつかない偽ブランド商品が売られているわけです。
つまり、本物ブランド品の原価も、とても安いものであることが想像できるはずです。
ゆえに高級ブランド品はアウトレットモールで、50%OFF、70%OFFで売ってもメーカーは元が取れるのです。高級ブランド品の原価も10%や20%くらいにすぎないからこそ成り立つ販売価格なのです。原価さえ割らなければ、安く売っても商売が成り立つアウトレットモールは、非常に賢い在庫処分の現金化拠点といえるのです。
他にも原価は激安なのに、ベラボーに高い価格の商品が世の中には存在しています。
原価100円もしない化粧品が5千円や1万円で売られており、生命保険も実際の補償に回るのは価格の3割程度で7割は企業の利益と広告費などのコストで消えています。
化粧品は百均で買えばよいし、保険より「都道府県民共済」がコスパが抜群なのです。
<第4回に続く>