皿洗いに見返りを求める夫。モラハラの塊のような夫から離れるまでを描いた実録エッセイ
公開日:2024/8/5
結婚相手が実はモラハラ(=モラルハラスメント)人間だったという経験がある人は少なくないだろう。モラハラをする人は自己愛が強く、自分の都合や機嫌に相手が合わせることを強制する。結婚前に見抜ければ良いが、つき合っている間に真の姿に気づけないまま入籍してしまうこともある。
『顔で選んだダンナはモラハラの塊でした』(鳥頭ゆば:漫画、モグ:原案 / KADOKAWA )は、原作者のモグさんの実体験を描いたエッセイマンガだ。とてもかわいらしい絵柄とは裏腹に、とにかくエグいモラハラの実態が繰り広げられている。本作はつき合っているときに「あれ?」と少しでも疑いを持ったなら、その違和感を見逃してはいけないと教えてくれる教科書のような作品だ。
結婚を考えている人は、ぜひ一度本作を読んでみてもらいたい。年齢や周囲の結婚ラッシュに焦り、「早く結婚したい」と思っているなら、どうか一度立ち止まってほしい。結婚はふたりで幸せになるためにするもので、決してひとりだけが搾取されるためにするものではないのだ。モグさんのケースになるようなリスクを考えて、慎重に判断することをおすすめしたい。
モグさんはとにかく顔がタイプの男・マロとつき合い、同棲を経て結婚した。なによりマロの顔が好みなので、デートの際に感じた違和感を飲み込むほど惚れこんでしまっていた。いくつもあった違和感をスルーしてしまったせいで、とんでもないモラハラ男を見抜くことができなかった。
夫は入籍した瞬間から「亭主関白」を宣言する。家事はすべて母親にやってもらってきたので、部屋の掃除はおろか2つ以上のゴミ袋をゴミ捨て場に運ぶことすら拒否する始末だった。そんな状況でモグが妊娠しても、夫の行動が変わるはずもない。父になったからといって家事を手伝うこともなく、自分の機嫌を周りに押し付ける。さらには怒りにまかせてゴミ箱を蹴って破壊し、機嫌が直るまで妻を無視し続けるのだ。
もし、本作を読んでモグさんと自分が同じだと感じるシーンがあるなら、逃げ出すことを本気で考えてほしい。モラハラを受けている側は自覚がないことが多いので、本作をモラハラ発見機として活用してみるのもおすすめだ。
夫は家事だけでなく、子育てをすることもなかった。だからといって収入が高いわけでもなく、モグさんひとりに皺寄せがいっていた。読み進めていくと「こんなに酷い人なんだから、早く離婚すればいいのに」と思うかもしれない。しかし、モラハラをする人は巧みに優しい顔を使いわけるので、なかなか洗脳から抜け出せないものなのだ。実際に、モグさんは夫への不信感を抱いていたものの、定期的な餌付け(たまにみせる優しさ)の度に何度もほだされてきた。
モラハラから抜け出すには、周囲の人に助けを求めることが大切だ。モグさんのように「心配かけたくない」という理由で助けてと言えないでいる人が、自分を大切にしてくれる家族を悲しませてしまうことも。自分だけ我慢すればいいと思っていても、母親が笑顔で暮らせない家庭では子どもだって笑顔になれないかもしれない。大切な子どもから父親を奪ってしまうと怯えるのではなく、自分が笑顔になることで子どもも笑顔にする未来を選んでほしいと思う。そして何よりどんなに焦っていても、結婚前の違和感だけは見逃さないでもらいたい。