「ねずみくんの絵本」シリーズの誕生秘話。たくさんの原画のほか、子どもも楽しい仕掛けが充実の50周年記念展覧会〈イベントレポート〉

文芸・カルチャー

公開日:2024/5/25

ねずみくんたちも大はしゃぎ 41作の原画が公開

ねずみくんのチョッキ展

 展示ブースに足を踏み入れると、オープニングムービーがまずお出迎え。

 続いて今回の目玉でもあるシリーズ全作の原画・スケッチが続く。「ここ見たことある!」というおなじみのシーンの原画がセリフとともに200点以上展示されており、見ごたえ充分。また各作品にはねずみくんからのコメントも。例えば1冊目『ねずみくんのチョッキ』には「はじめてなので、ぼくと同じくらい絵の上野さんもあがってしまい、ライオンさんとアシカさんのひげを書き忘れてしまったそうですよ」など当時の裏話も語られており、ここを読むだけでも楽しい気持ちになれる。

ねずみくんのチョッキ展

 ちなみにトークショーの中でなかえさんは自身のラフスケッチについて「下手でしょう。あの下手な感じが(上野は)すごく気に入っているんですよ。あれが上手いと描きにくいらしい」と一言。そのラフスケッチも展示されていたが、どれも解釈の幅を残しながらかわいらしい表情が書き込まれており、上野さんが想像力を刺激されるのもうなずける素晴らしいものだった。

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ねずみくんのチョッキ展

 他にもねずみくんのファッションを集めたパネル展示やシリーズの大切なアイデンティティともいえる“余白”を体感できる小部屋など、作品の魅力をあらゆる角度から紹介する。

 もうひとつ印象的だったのが、トンネルがあったり、見落としがちなところにねずみくんとねみちゃんがいてこちらを見ていたりと、いくつもかわいらしい仕掛けがあったところ。トークショーでなかえさんが「いつもはすみっこで枠の中で生きているねずみくんたちだけど、今日会場の中を見てみたら結構派手に飛び回っていて。会場の中で遊ばせていただいていますね」と素敵な表現で伝えてくれた通り、ねずみくんたちもこの展覧会を楽しんでいる様子がうかがえた。オリジナル絵本がつくれるスタンプや(絵本は別途購入の必要あり)、ねずみくんたちにメッセージを書くブースがあるなど、絵本の一番の読み手である子どもたちも楽しめる展覧会になっている。

ねずみくんのチョッキ展

 後半にはなかえさんと上野さんのもうひとつのライフワークでもある、油絵「少女チコ」シリーズの原画も展示。1966年の『ペラペラの世界』など、その黒を基調とした世界観は一見ねずみくんシリーズとはまったく異なる作品のように思える。しかしこちらも“目に見えないもの”を私たちに伝えるという意味ではおふたりらしさが詰まった作品だった。

 最後にはアトリエの写真、一緒に見ていたスクラップなどおふたりが想像力を膨らませるもととなったものたちが公開。おふたりの愛と信頼、共通する感性と「目に見えないものを伝える」というテーマがあったからこそ作品たちが生まれたのだということが、ひしひしと感じられる展覧会だ。

文=原智香、写真=三浦貴哉


50周年展覧会サイト:https://www.poplar.co.jp/pr/nezumikun50th/exhibition/
50周年サイト:https://www.poplar.co.jp/pr/nezumikun50th/

ねずみくんのチョッキ展

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