森永卓郎さんに聞いた!高齢者のオルカン積み立てNISAはやっちゃダメ?/モリタクさんの「お金の話」もりだくさん!⑫
更新日:2024/10/7
Q.最近オルカン投資と積み立てNISAを始めました。長期、分散。積立のうち長期の部分が当てはまりません。これからの余命を予測出来ないからです。仮に5年位経過して最悪50%の暴落時に自分の死が訪れた時に遺族に半分しか残せないことに気が付きました。やはり、高齢者はオルカン等止めて今のうち解約したほうが良いのでしょうか?(T.S.、70代、無職、女性)
いますぐ解約することをお勧めします。投資の専門家の間でも、老後資金を投資で増やそうとしては絶対にいけないと主張する人は、たくさんいます。私が高齢期の投資を否定する理由の一つは、暴落の危機が迫ってきていることです。「最悪50%の暴落」とおっしゃいますが、私自身は5年以内に90%以上の暴落が来ても、何の不思議もないと考えています。1929年10月にアメリカでバブル崩壊が発生したとき、ニューヨークダウは3年足らずで90%も下落しました。いま世界を覆っているバブルは、その時以上だと思われるので、オルカン(事実上大部分は、アメリカ株)が10分の1以下に値下がりするリスクは十分あるのです。
もう一つの理由は、いまの為替が行き過ぎた円安になっていることです。私はシンクタンク勤務時代、計量経済モデルの構築とシミュレーションを生業としていました。その時の経験で言うと、為替について、最も説明力の高いモデルは、2国間の資金供給量の比で決まるというモデルでした。例えば、対ドルレートで言えば、アメリカの資金供給量と日本の資金供給量の比で適正為替レートが決まります。そのモデルで、現状を分析すると、いまの適正為替レートは1ドル=110円程度ということになります。長期的には適正為替レートに戻っていきますが、そうなると現状より3割ほど円高が進むことになります。そのことは、為替の適正化だけで、オルカンの価値が3割減価することになります。
いまの株高も円安も、投機筋が仕掛けているものです。投機が継続している間は、じわじわと株高と円安が進みます。しかし、潮目が変わった後は、逆向きの潮流が一気に進みます。株安と円高のダブルパンチで、投資金額がわずか数パーセントにまで減価するリスクがあるのです。
それでも若い人なら、リスクを取りにいってもよいかもしれません。仮に投資金をすべて失ったとしても、そのあと30年、40年かければ相場が回復する可能性があるからですし、ハードワークをすることで、より多く稼ぐという選択肢もあるからです。一方、中高年には30年も40年も待ち続ける時間的余裕はありませんし、ガンガン稼ぐという選択肢も現実的ではありません。
いまはまだバブルが継続中なので、いま解約をしても、損失が出ることはほとんどないと思います。もちろん、今後もバブルが継続する可能性はありますから、「解約しなければよかった」と思われるかもしれません。ただ、大切なことは、高齢期に入ったら取り返しのつかないリスクを取っては絶対にいけないということなのです。
ちなみに私は、少し早まったのですが、今年に入ってから、外貨建ての投資信託はすべて売却しました。
<第13回に続く>