現代の音楽はすぐ消費されて、代替品が出てくるもの? 元WEAVER・河邉徹が小説『ヒカリノオト』に込めた思いとは
公開日:2024/6/5
「すべて忘れてしまったはずのことが、あの曲を聴いただけで、思い出せるのはなぜだろう」――。2024年5月23日(木)、元バンドマンの小説家によって紡がれた「音楽と人生」の物語『ヒカリノオト』がリリースされた。ひとつの音楽が巻き起こす奇跡に、感動の声が相次いでいるという。
著者の河邉徹は、2004年に結成されたバンド・WEAVERのドラムを務めていた人物。その傍らで2018年に『夢工場ラムレス』で小説家デビューを果たし、2020年にはフォトグラファーとして星空と風景の写真集『Before a Story ~Lake Tekapo~』を制作するなど、マルチな才能を発揮させている。
そんな河邉が今回手掛けるのは、本領とも言える「音楽」にまつわる物語。実をいうとWEAVERは2023年に解散しているのだが、その後にファンから送られた「ファンレター」がきっかけとなって執筆されたのだという。
『ヒカリノオト』は連作短編形式となっており、全6章にわたって物語が展開される。第1章「スクイノオト」では、大ファンだったアーティストの担当になったものの、努力が結果に結びつかない若手レコード会社社員・寺井(テラ)の葛藤が描かれていく。
そこで登場するアーティスト・染谷達也は30代半ばの男性で、かつてはそこそこ売れていたそう。しかし現在はCDもライブのチケットも売れなくなり、会社からも期待されなくなってしまう。それでもテラは、かつて自分を救ってくれた音楽を生み出した染谷を復活させるべく、尽力していくのだが――。
続く第2章「ココロノオト」に登場するのは、上司の期待に押しつぶされて知らずのうちに心身を壊してしまった女性、第3章「コイノオト」は久しぶりの恋の予感にときめくカメラマン、第4章「マホウノオト」は高校の合唱コンクールで伴奏と楽曲のアレンジを任された女生徒、第5章「オモイデノオト」は海辺の町のリサイクルショップでガラクタを修理し続ける男性……といったように、それぞれで異なる人物にまつわる物語が進められていく。
その一方で、“ある楽曲”がいずれの章にも登場する。それは、第1章で染谷が“最後の曲”として制作した「夢のうた」だ。ある時は人の心の支えに、またある時は恋のきっかけに。この楽曲が場所や時間を超えて人々の思い出に寄り添い、そして終章「ヒカリノオト」では……。
同作を執筆するにあたり、河邉は初めて真正面から「音楽が人生に与える影響」を深く見つめたといい、現代における音楽の存在についても鋭い示唆を投げかけている。その中で生み出された“音楽の奇跡”に、読者からは「ああ、これはべーちゃんの言葉だ、大好きだなあ」「第1章が刺さって涙出てくるよ」「好きな音楽や、アーティストへの私の気持ちを代わりに言語化してくれてるみたいな小説だった」といった反響が寄せられている。
そんな『ヒカリノオト』のリリースを記念して、2024年6月15日(土)にオンライントークイベントと1対1のオンラインビデオ通話イベントが開催される予定。各コースとも数に限りがあり、先着順となっているので興味のある人は早めにチェックしておこう。
ちなみに『ヒカリノオト』を読み進めていくと、WEAVERのファンならハッとするフレーズが登場するようだ。同バンドでほとんどの作詞を担っていた河邉が今、何を伝えたいのか。ぜひ、自身の目で確かめてほしい。