しごできコミュ障OL×ポンコツコミュ強大学生の成長譚? 「相席」でお互いの長所を学ぶコミカルマンガ
PR 更新日:2024/6/25
周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかない、与えられた仕事を満足にこなせなかったなど、悔しい思いをしたことが誰しも一度はあるだろう。そんなときに相談できたり、目標にできたりする人が近くにいたらどれほど救われるだろう。
そんな思いを「相席」という場所を使い、コミカルなマンガに仕立てあげたのが河上だいしろうさんによる作品『相席いいですか?』(集英社)だ。
主人公は椿と桃子というふたりの女性。椿は仕事をさせると会社で一目置かれるほど優秀な存在だが、部下や同僚に対しては理詰めの助言をして相手を追いつめてしまうなど、良かれと思った行動が裏目に出てしまうことばかり。なんとかしようと悩んでも「話し言葉の語尾をかえれば仲良くなれるのでは?」と思いこむような暴走気味なところもあり、仕事以外のコミュニケーションに苦手意識を抱えていた。
もうひとりの主人公である桃子は大学生。午前中のバイトだけでコップを9個割ってしまうほど不器用で、日ごろから仕事能力のなさをなげいていた。しかし愛想のよさと高い会話能力で、誰とでもすぐに打ち解けることができる一面を持っている。
それぞれ出来ない自分を悲観していたとき、偶然入った喫茶店で「相席」することになり、ふたりは出会う。そして同じ時間をすごし、お互いをみならっていけば、自分の苦手な「コミュニケーション」や「仕事」という分野を克服していくことができるのではないか? そうやってお互いの利害が一致したことで、ふたりの「相席」関係がはじまっていくのだった。
『相席いいですか?』の主役のふたりは非常にかわいい。河上だいしろうさんのやわらかいタッチによるところも大きいけれど、それは絵柄の魅力だけにとどまらない。読み進めれば進めるほど、ふたりのキャラクターがより魅力的に見えてくるように設計されているのだ。違った得意分野を持つふたりが、互いに憧れを持ちながら相席をくり返す。相手のいいところを我が物にしてやろうと目を皿のようにして構えており、互いのいい面を見逃さずにキャッチして読者に見せてくれる。
容易に同じようには行動できないことを悲しみながらも、ああなりたいという憧れの感情と、やっぱり魅力的だなという思いをいっそう強くする。そしてまた相手の一挙一動を注視するようになる。言うなればひたすら相手の良い部分をつねに探している状態なのだ。
あこがれを持った目線で相手の良い部分を意識して集めることで、互いのことがいっそう魅力的に見えるようになってくる。それはもちろん作中のふたりにとってだけでなく、読者である私たちにとっても同じことだ。読めば読むほどふたりの良い部分が蓄積されていき、気がついたら主人公たちに夢中になってしまうのだ。
軽妙な会話の掛けあいや、その純粋ながらもちょっとズレた行動を楽しめるだけでなく、ふたりのキャラクターの魅力そのものにとらわれる。読み進めるほどにその魅力に深くはまりこんでしまう。そんな感覚を抱かせてくれることが本作の最大の強みだといっていいだろう。
今現在、人間関係に悩みを抱えている人は、苦手な部分を改善しようともがくふたりの姿から、問題解決のためのなんらかの糸口を見つけることもできるかもしれない。そういったノウハウを求める人にとっても価値ある作品だ。もちろん、純粋にふたりのコミカルな掛けあいと成長を楽しむのも大歓迎。読み進めていくうちに、いつしかふたりの魅力にどっぷりとはまっている自分に気がつくはずだ。