トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/第5回「日向坂46」

文芸・カルチャー

公開日:2024/6/7

おもしろおかしくとんかつ駅伝

僕は正直アイドルに興味がありません。子どもの頃に人並みにモーニング娘。とか鈴木亜美をテレビで見てましたが、お金を払ってコンサートに行くとかはなかったですし、どっちかというと夏フェスに出るバンドとかが好きでした。

しかし、3~4年ほど前から急に日向坂46というアイドルが好きになりました。3~4年と言っているのは自分でもどのタイミングで好きになったのか定かではないからです。
しっかり覚えているのはオードリーさんがMCでアイドルと番組をやるので勉強じゃないけど毎週見ていたこと。なので比率は9:1でオードリーさんを見ていたのですが、今は1:9と反転しています。
自分でもビックリしている。今までは「ドブネズミみたいに美しくなりたい」みたいな曲ばかり聴いていたのに急に「君のその仕草に萌えちゃって」みたいな曲が好きになったのだから。
携帯ゲームはほぼやらないのですがユニゾンエアーという日向坂46の音ゲーを家に入る前の外階段で毎日1時間くらいやっていました。そこで職質されたこともありその時も警察に目を合わせず「この1ゲーム終わるまで待って下さい。」と、言って警察を日向坂ゲーム待ちさせた自分が信じられないです。

気がついたら好きになってたので理由がわからなかったので何でこんなに好きになったのかを考えた所2つ浮かびました。
1つ目は競争意識があまりなさそうだから。
色んなアイドルを見ていると人気投票をしたり自分が1番目立つセンターを絶対やりたいというようなグループが多いのですが日向坂46のセンターをデビューから連続でやっていた小坂菜緒ちゃんは自分がセンターではなく他の人がなった時に安心して泣いていたのです。センターになれなくて泣くのは見たことありますがセンターから外れてホッとして泣くのは見たことないです。他のメンバーもセンターになることに異常に執着してるとかには見えません。このグループは人を蹴落としてという考えがないのだと思います。僕も蹴落としてという考え方は好きじゃないです。誰かの足を引っ張ってとか出し抜くとか最悪だと思っています。アイドルはある意味ズルい所もないといけないとは思うのですがそういう気持ちがかなり薄い所が好きなのかもしれません。

もう1つは根性がある所です。
坂道グループなんていったら結成した時点である程度の人気にはなりそうですが最初の頃握手会に1人も並ばなかったのを見たことがあります。すごい叩かれたりもしていたようです。内容は違うと思いますが僕も今の事務所に入った時に急に知らないお客さんが僕の所に来て「あなたのことが嫌いです。」と言われたことがありました。僕らのネタの時だけ会場の外に出て終わったら戻ってくるというバンドの対バンスタイルをとってくる人もいました。アンケートで「死ね!」とか「トム・ブラウンに金を払う価値はない。」とか5点満点の得点で「マイナス10点」と独自の採点をしてくる人もいました。お笑いなら言われてもお笑いになるのですがアイドルはそんな場所がないのでかなりしんどいと思います。それでも心折れずに頑張ったのは根性です。根性が好きなんだと思います。

ただ、なぜ今の2つが好きなのか。しっかり考えてみました。恐らく日向坂46は歴の長い地下芸人さんと似ているからなのかなと思いました。歴の長い地下芸人さんは20年以上売れてなくても人の足を引っ張って自分が上にいこうとかがない。ライブで叩かれたり世間から白い目で見られたりしても関係ない。ただただお客さんを笑わせたいだけ。つまり
「邪念」
が1つもないのです。人間が生活する上で1番難しいことのような気がするのでそういう人を見るとすごい好きになります。日向坂46も「邪念」がかなりないのかなと思います。だから日向坂46と歴の長い地下芸人さんは一緒なんだと思います。

 

先日、久しぶりにお客さんが数人しかいないゴリゴリの地下ライブに出ました。会場に入ると久しぶりに歴の長い地下芸人の皆さんに会いました。その時に思いました。
まん☆だん太郎さんはキャプテン佐々木久美ちゃん、雨の群雲さんはカトシこと加藤史帆ちゃん、大嶋の一番弟子はおすしこと金村美久ちゃんでギャバホイ27歳さんはこさかなこと小坂菜緒ちゃんだ!!

 

「、、、、う~ん。何か違うか。」

<第6回に続く>

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