尽くしてしまう自己肯定感の低い女性と、仕事ができて優しいがウラの顔を持つ男性。ふたりの関係はどうなる? 先の読めない恋愛サスペンスコミック『すきだから、だよ』
PR 公開日:2024/7/21
恋愛中に相手と自分の気持ちに差があることを感じると、「重いくらい愛されたい」と願うことがある。だがもし本当に重い愛を向けられたら、自分は受け止めることができるのだろうか。
『すきだから、だよ』(山口えいと/小学館)は、そう考えてしまう恋愛コミックだ。ほんわかしたストーリーの裏に隠された“サイコな愛情”にハラハラさせられるのである。
誰にでも親切で優しい馬酔木(あせび)はなは、交際7年目の彼氏と同棲中。だが、ふたりの関係は順調とは言えず、はなは一方的に愛情を与えているように感じていた。
交際7年目の記念日にショッキングな出来事が。なんと、はなは彼氏の浮気現場に遭遇してしまう。傷つき、家を飛び出したはなは、会社の先輩で営業部のエースである青木とばったり会い、彼の優しさに救われる。
事情を聞いた青木は、自分が暮らすシェアハウスでの生活を提案。迷ったものの、帰る家のないはなは、彼の誘いを受けることに。
シェアハウスでは青木の姉やスポーツインストラクター、パチプロ、職業不明の日英ハーフなど、職も年齢も様々な住人たちが生活していた。はなが手料理を振る舞うと、住人たちにべた褒めされ、元彼には「食事が出てくるのが当たり前」のように扱われていたため心が満たされる。
そんなほっこりストーリーが続くのかと思いきや、物語は思わぬ展開に。実はクールで優しい青木は裏の顔があるヤバいヤツだった。自室の壁にはなの写真を貼るなど、狂気的な愛情を心に秘めていたのだ。
なんとしてもはなを手に入れたい青木は綿密な計画を練り上げて行動している様子。ストーリーが進むにつれ、青木の企みや計画が少しずつ明らかになるのだが、その重い愛情にゾクっとさせられるだろう。
果たして、はなたちはどのような関係になっていくのか。そして、青木がひた隠すサイコな愛情を、はなが知ってしまう日は来るのだろうか。
なお「胸キュンな恋愛漫画」という言葉では片付けられない本作は、自分のことを好きになれない人に響く物語でもある。はなは自分のことを過小評価して他人を優先する性格。交際相手にすら言いたいことや気持ちを伝えられず、いつも相手の意志を尊重してきた。
だが、シェアハウスの住人たちから料理を褒められたり、青木の優しい言葉に触れたりする中で、少しずつ自分のことを大事にできるようになっていく。特に心を揺さぶられたのは、浮気をした彼氏にはなが別れを告げるシーンだ。
青木の助けを借りながらではあるが、反省せず、だが関係の修復を迫る彼氏に、はなはしっかりと自分の思いを告げる。その姿から勇気をもらえる読者は多いはずだ。
人を愛するにはまず、自分を愛することも大切。そう思わせてくれる本作は、自分を好きになるきっかけも授けてくれるだろう。今まさに苦しい恋愛で心を痛めている人にも届いてほしい。
文=古川諭香