元乃木坂46・樋口日奈主演で実写化が決定した不倫マンガ。テレビ中継に映った不倫現場から始まる群像劇
公開日:2024/7/4
笑顔こぼれる今の生活が“100%幸せ”だと、胸を張って言えるか。現実はキレイではなく、淀んでいる。誰かが誰かに惹かれる、恋愛もそう。コミック『初恋不倫~この恋を初恋と呼んでいいですか~』(横馬場リョウ/白泉社)からも、それは伝わる。
本作は月刊ウェブ・マガジン「Love Silky」(白泉社)の人気連載作品で、最新7巻までのコミック各巻(電子版のみ)では、登場人物たちの過去をたどる短編エピソードも描き下ろしで収録。7月3日からは、元・乃木坂46の樋口日奈が主演するドラマ版『DRAMA ADDICT「初恋不倫~この恋を初恋と呼んでいいですか~」』(BSテレ東)が放映され、7月5日には紙版の第1巻も発売される。
幼稚園教諭の主人公・財前穂波を中心に描かれる群像劇では、過去と未来を行き来する。登場人物たちの関係は相関図を描きたくなるほど複雑で、だからこそ、それぞれが抱える“リアル”な心理描写に強く引き込まれるのだ。
ある日、穂波は歯科技工士の夫・俊一が女性と腕を組んで歩く光景をテレビ中継で見てしまう。俊一の財布から当日に発行された「ホテル」のレシートも発見し、「浮気した?」と穂波が問い詰めた直後の場面では、夫の顔が一瞬“黒塗り”になる描写で、彼女の心がスーッと離れる瞬間を巧みに表現する。
しかし、穂波も揺れる。同じマンションに住む既婚者の警察官・時松千尋とふと出会い、たがいの距離は接近。俊一が勤める歯科医院の同僚で不倫相手の神志那環奈、穂波が勤める幼稚園に子どもを預けるパパとの不倫で「初恋」を味わう彼女の友人・香真莉亜など、登場人物はそれぞれの思惑にしたがって恋に溺れていく。
パートナーを想い不倫を続けるべきか、やめるべきか。パートナーの不倫を許せるのか、許せないのか――。葛藤が渦巻く中、不倫に興じている俊一、穂波と千尋の関係に不信感を募らせる千尋の妻・ミホがそれぞれパートナーを前にして「離婚なんて有り得ない」と告げる場面はひどくしみったれていて、人の心など“キレイに整理できるわけがない”と、現実を突きつけられる。
誰もが心のよりどころを探していて、スキマを“何か”で埋めようとしている。本作は、単純な“恋愛作品”ではない。誰もが共感しうる、感情の機微をつまびらかにする良作だ。
文=カネコシュウヘイ