うつ病の自分を変えようと始めた散歩。「暗い毎日」を救った夜の隅田川【作者インタビュー】
公開日:2024/7/11
SNSでメンタルをテーマに、イラストと言葉を発信するなおにゃんさん(@naonyan_naonyan)。合わない職場環境が原因で、過去にうつ病と適応障害を発症したことがある。当時は休職することは「逃げ」だと思い、情けなさや恥ずかしさを感じていたという。だが「休職中に弱い自分を変えたい」と一念発起。病気から、会社から、日本からも全力で逃げたなおにゃんさんが気づいたこととは?
そんな実体験を基に描いたコミックエッセイ『うつ逃げ~うつになったので全力で逃げてみた話~』が同じような悩みを持つ人からの共感を得ている。第9話は「何かを変えたい」と動きだしたなおにゃんさんが始めた散歩について。ある日、夜の街を歩いていると、目の前の景色に心を動かされる。なおにゃんさんに散歩の効果について聞いた。
美しい景色を見て「絶望にも意味があった」
――散歩を始めて、いい変化は起きましたか。
朝起きてから1時間以内に30分ほど歩くと、セロトニンが活性化されてうつ病にいいと知ったので実践してみました。午前中に起きて散歩するのが理想的ですが、自分は朝が得意ではなかったし、続けることが大切だと感じていたので、お昼に起きたときは午後に散歩したり、漫画に描いたように夜に散歩したりすることもたくさんありました。毎日続けていると、不規則な生活が改善されるし、続けることで自己肯定感も上がるし、少しずつ体調もよくなっていったように思います。
――作中では夜の隅田川を見たなおにゃんさんの気持ちが描かれていました。このときの隅田川は、今までと違って見えたのでしょうか。
たしかに今まで見ていた隅田川とは違って見えました。たぶん理由はふたつあって、ひとつは単純に昼の隅田川はよく見ていたけど、夜の隅田川を見る機会があまりなかったということです。浅草の夜の光とライトアップされた橋の光が川に反射しているのを見ると、脳がぐらぐらするような感じになり、とても色っぽくて感動しました。もうひとつはメンタル的な話です。うつ病で休職してしまい「自分は何もない人間だ」と毎日どん底な気分だったのですが、絶望しているときに見る景色って、異常なほど美しいんです。大病を患った方が「桜ってこんなにきれいだったんだ」と感動するような話と、少し似ているのかもしれません。あのとき見た夜の隅田川が今でも忘れられないし、自分の心の支えになっています。だから、絶望にも意味があったんだと思います。
――このころから、うつ病は回復傾向に?
ふり返ってみると、そう感じます。朝散歩を続けたこと、気候も暖かくなって冬季うつが改善されたことで、体も回復していったように思います。
休職中の人や、休職を考えている人に向けて、自分の経験が少しでも役に立てばと描き始めたなおにゃんさん。本作をまとめた書籍も発売中なので、気になる人はチェックしてみよう。
■なおにゃん
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