民放初の赤ちゃん向けTV番組「シナぷしゅ」誕生秘話! かわちゃんの第一印象は…うさんくさかった!?【インタビュー前編】
更新日:2024/7/1
テレビ東京「シナぷしゅ」のプロデューサー飯田佳奈子さんと、番組内の人気コンテンツ「たってすわってたちうおバンザイ」などを制作する絵本作家「さかなのおにいさん かわちゃん」の対談が実現! 同番組の“おさかなソング”の制作でつながりのあるおふたりが、「シナぷしゅ」誕生秘話や寝かしつけの悩み、新刊『おさかなねんね』などについて、語り合ってくれました。対談は大いに盛り上がったため、2回に分けてお届けます!
■「シナぷしゅ」制作秘話 きっかけは飯田Pの子育て支援センター通い
かわちゃん:この機会に聞きたいんですけど、何がきっかけで「シナぷしゅ」は生まれたんですか?
飯田さん:2018年6月に1人目の男の子を産んで、生後4か月半ぐらいから地域の子育て支援センターに通うようになったんです。そこで周りのお母さんたちが、「昨日、子どもに1時間ぐらいテレビを見せちゃった」「うちも同じ、少しぐらい見せても大丈夫だよ」という会話が聞こえてきて……。眉をひそめて小声で話しているんですよ。
かわちゃん:テレビを見せることに罪悪感があるということですね。
飯田さん:それを聞いて、確かに私もあまり積極的には子どもに見せてないなと気がついて。自分のやってきたテレビの仕事が、育児にとってそんなに“敵”なのかなと疑問を持ちました。
もう一つ、乳幼児向け番組がEテレだけで選択肢がないのが、すごく不自由なことなんじゃないかと思うようになりました。同じような内容の朝のワイドショーは飽和状態なのに、なぜ民放テレビ局で乳幼児向け番組をやらないんだろうと思い、調べてみました。
かわちゃん:なんで民放は赤ちゃん向け番組をやらなかったのですか?
飯田さん:視聴率の問題がありますね。視聴率の年代別調査は4歳以上が対象で、0~2歳向けの番組を作るのは「視聴率は0%でもいい」と言っているようなもの。それではこれまでの視聴率ビジネスが成り立ちません。広告収入は視聴率が指標となって決められるので。
けれども翌年6月に復職したときは、ネットメディアの台頭などもあり、ビジネスモデルが変わっていくタイミングでした。配属先も広告収入に頼るだけでなく、新しい収入源を考える新規のセクションだったので、「シナぷしゅ」の企画書を書いて提案しました。
復職後は子どもを保育園を預けても、すぐ熱を出してUターンして帰ることもしょっちゅうあったので、後ろめたい気持ちも。だから、より頑張るじゃないけど、別に求められてもいない企画書を出して、やる気をアピールしたかったというのもありました。
かわちゃん:ということは、「シナぷしゅ」は誰かのためとかじゃなく、自分の子どもとか、自分の環境のために作ったという感覚ですか。
飯田さん:そうですね。本当に息子に誇れる仕事がしたい、子どもが喜ぶ仕事がしたいという気持ちが強かったです。
■中に何か入っている!? 「ぷしゅぷしゅ」の不思議な引力
かわちゃん:今、実際に2人のお子さんは「シナぷしゅ」を見てくれています?
飯田さん:ものすごく見ます! 息子は6歳になり、さすがに私がこの仕事をしていることをわかってくれていますけど、3歳くらいのとき、私が「シナぷしゅ」をめっちゃ好きな人だと勘違いしていたようです。
かわちゃん:「シナぷしゅ」推しのお母さんだと思っていたんだ。
飯田さん:街中で「ぷしゅぷしゅ」のキャラクターを見つけると、「ほらママ、『シナぷしゅ』だよ」って教えてくれたりね。息子が1歳半のときに「シナぷしゅ」が誕生して、今度は4つ下の娘が“「シナぷしゅ」がある世界”に生まれてきたので、その違いを感じます。しゃべり出してすぐに「ぷしゅぷしゅ」って言うようになるなど、日々いろいろ会得しています。
かわちゃん:僕も昨年10月に子どもが生まれて初めてわかりましたけど、「ぷしゅぷしゅ」の“引力”はすごいですよね。この間、「ぷしゅぷしゅ」の形をしたシリコン製の「おやすみライト」を買ったんですよ。家で置いておくと、小魚くん(息子さんの愛称)が自然に引き寄せられて自分でプシューッと潰したり、幸せそうな顔でそれを舐めてみたりして……。中に何か入っているんじゃないかと思うぐらい引き寄せられるんですよ。
飯田さん:うん、中に何か入っているかも(笑)。あの引力はなんなのか、不思議です。
■おさかなソング誕生秘話 かわちゃんの第一印象はうさんくさい!?
かわちゃん:僕は番組の途中からジョインさせてもらいました。『すしぞくかん』という絵本を出したときに、そのPRをされた方を介して、お魚のラップソングを作れる人を探しているという話を聞いて、飯田さんを紹介してもらいました。
飯田さん:2021年の夏に向けて、お魚のネタをやりたかったんですよ。お医者さんの小児科に、熱帯魚とかの水槽があるじゃないですか。その水槽に子どもたちが顔を近づけて張りついて見ている“画”や、水族館も好きだったので。テレビ画面の中を、水槽や水族館みたいに作れたらいいなと思っていました。
かわちゃん:そこでやって来たのが、カレイとヒラメの蝶ネクタイを付けた謎の男でした。
飯田さん:そうそう、「絵を描けるし曲も作って歌います」と言うから、初対面のときは本当に全部できるのかなと、うさんくさく思ってました(笑)。怒らないでね。そうしたら、とんでもなくいいデモをあげてきてくれたんです! これはすごい人を見つけたなと思ってうれしかったですね。そして生まれた歌が「おさかなしりとりずかん」。
かわちゃん:自分が小さいときに「ポケモン言えるかな?」という歌で、ポケモンのキャラを覚えたんです。あのテンションで、ついつい名前を言ってみたくなるお魚ラップソングを作りたいと思って取り組んだのが、あの曲でした。ただ、じつはラップ未経験だったんですけど(苦笑)。
■新作おさかなソングもママたちを助ける!
飯田さん:「おさかなしりとりずかん」の歌はすごくよかったですよ。インパクトが強烈でした。
かわちゃん:意外な反響もありました。「なんだあの歌は!「おさかなしりとりずかん」なのに途中からしりとりしていないじゃないか」と。エゴサーチしたら、ある投稿にしりとりしてない部分に「×」がつけられていて、「計65点」と書いてありました。けれども2作目、3作目とお声がけいただきました。
飯田さん:歌を作ってイラストを描くかわちゃんと、それをアニメーションとして動かすチームとの歯車が噛み合って、ものづくりとしてすごくよかったので。これは第2弾、第3弾と同じ座組で今後もできると確信しました。また、かわちゃんはアイディアマンでいらっしゃるから。ただ、アイディアを出せば出すほど、作画の枚数がどんどん増えて大変に……。
かわちゃん:いらんことをつい言って、自分の首を絞めちゃうんです(笑)。
飯田さん:今も8月末にオンエア予定の歌を制作中ですね。タイトルは「さんまのサンバ」。
かわちゃん:はい、サンマにサンバを躍らせます。おいしいサンマの見分け方も途中、Aメロで入れますよ。
飯田さん:主婦的には、その情報はすごくありがたい! 私はいつも、かわちゃんの歌から魚の知識を得ています。
かわちゃん:確かに「シナぷしゅ」世代のママからは、(2作目の)「たってすわって たちおうバンザイ」の曲がきっかけで、「初めてうちの子が立ちました」とうれしい感想が寄せられたり、魚の豆知識を得られるから「助かってます」というコメントが多いんですよ。次の「さんまのサンバ」も、また世間の親御さんを助けちゃいそうですね。(後編へ続く)
インタビュー・構成=小林智明
撮影=深田卓馬
飯田佳奈子さん
テレビ東京「シナぷしゅ」統括プロデューサー。1988年生まれ。群馬県出身。東京大学文学部フランス文学科を卒業後、2011年テレビ東京に入社。2018年に第一子を出産し、2019年に職場復帰してすぐに「シナぷしゅ」の企画書を提出。以降、「シナぷしゅ」の制作面の総合演出だけでなく、ビジネス展開も含めたコンテンツ統括プロデューサーを務める。2022年第二子を出産。二児の母。
さかなのおにいさん かわちゃん(川田一輝)さん
1990年生まれ。大阪府出身。さかなの“オモロい”生態や海の大切さをイラストや歌で伝えることで、子どもの「やさしい想像力」を育てる活動をしている。子ども向けTV番組「シナぷしゅ」で「おさかなしりとりずかん」「たってすわってたちうおバンザイ」「サメの歯はえほうだい」などの作詞作曲・うた・イラストを制作。著書に『おさかなさがしえずかん』など多数。また川田一輝としてラジオDJ・声優でも活動している。2023年秋に誕生した一児(通称:小魚くん)の父。
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