コンビニすら初めての御曹司小学生と同居。ボロアパート暮らしの女子大生との訳アリコメディマンガ『8月の日記はラズライト』
公開日:2024/6/27
生きていると、想定外の出来事というのは案外あちこちで起こるもの。でもまさか、見知らぬ子どもと、しかも大企業の御曹司と一緒に暮らすことになるなんて――。
『8月の日記はラズライト』(松月滉/白泉社)は、一人暮らしの女子大生と、そこに同居することになった訳アリ美少年の同居コメディ。本作は、白泉社が発行しているWEBコミック誌「花ゆめAi」に掲載されている漫画作品で、2024年6月20日、ついに待望の単行本版が発売された。
この物語の主人公は、ボロアパートで一人暮らしをしている女子大学生・星野誠。誠はアパートに自分以外の入居者がいないこともあり、庭にキンモクセイやきゅうりを植えた「マイ プチガーデン」を作るなどして自由に楽しく暮らしていた。しかしある夏の日、アパートの取り壊しを大家さんに告げられ、半年後の退去を余儀なくされてしまう。
引っ越すとなれば、何かとお金もかかる。でも、息子夫婦と暮らすことになったと嬉しそうに話す大家さんを見ると何も言えず、持ち前の明るさで気持ちを切り替える。そんな中、インターホンが鳴ってドアを開けると、見知らぬ男の子が立っていた。この男の子・雨宮天藍をアパートへ向かわせたのは、探偵事務所で所長をしている誠の父親。誠は、父親に「衣食住の費用は家主の分ごと雨宮家持ち」という条件で、1か月間天藍と一緒に住んでほしいと告げられる。ここから、2人の生活がスタートした。
天藍は、不動産会社や建設会社など複数の会社を持つ雨宮ホールディングスの御曹司。コンビニすら初めて入るレベルの世間知らずだ。おまけに、みんなの前では「外交用」のキラキラオーラを放つ健気な少年を演じているが、その実態は大人顔負けの頭脳を持った生意気かつ好奇心旺盛な男の子。誠は天藍に振り回され、初日からぐったりしてしまう。でも、そうかと思えば、「…お人好しすぎるのもどうかと思ってな」と誠にアドバイスをしたり、時折すべてを諦めたような冷めた表情をしたり……。彼の心の中には何があるのだろう?と考えずにはいられない、心の内が見えない危うさも持っている。
1巻の段階では、天藍が「お忍び」で誠の家へやってきたことしか分からないが、そこには何やら深い事情がありそうな予感。これまでどんな人生を歩んできたのか、そのすべてを見てみたくなった。時折挟まれる天藍の日記を読んでいると、どうにか心を溶かして幸せを感じられる子になってほしい、と願ってしまう。
一方、そんな天藍と真正面から向き合い、打ち解け、普段と変わらない自分を貫く誠。彼女のおおらかさや明るさもまた、本作の魅力のひとつ。彼女のいい意味での「普通さ」は、きっと天藍の中にある闇を少しずつ消し去っていくことだろう。誠と天藍の同居期間は、たったの1か月。その1か月で2人はどんな生活を送り、天藍はどう変わっていくのだろうか。また、雨宮サイドで何が起こっているのかも非常に気になる。2人の動向からも、物語の展開からも、引き続き目が離せない!
文=月乃雫