「うんこ」が学びのきっかけに! 地球と生命の歴史について、子どもの興味を引き出してくれる1冊
PR 公開日:2024/7/4
現在小2と5歳の男子ふたりを子育て中なのですが、なぜこの年代の子どもはみんな(ではないかもしれませんが)「うんこ」「おしっこ」で盛り上がるのでしょうか? きっかけがあれば公園でもお家でもこのワードを連発。母はその度に能面になってしまいます。しかしその「うんこ」が学びのきっかけになるかもしれない。それが『地球と生命の歴史がわかる!うんこ化石』(泉 賢太郎:著、藤嶋マル:イラスト/飛鳥新社)です。
本書でうんこ化石博士と紹介されている著者・泉賢太郎さんは古生物学者。そんな泉さんのロマンと知識を、「うんこの化石」という子どもたちの興味を引く切り口で詰め込んだのが本書です。ひとつのうんこが化石になるにはどのくらい険しい道のりを歩む必要があるのか。そしてうんこ化石からどんなことがわかるのか。古生物という学問自体の魅力がこの一冊に詰め込まれています。
最初は、子どもたちが大好きな恐竜・ティラノサウルスのうんこの大きさクイズから。どれくらいの大きさかというと、約60cm×20cm、人間のうんこの約37倍なのだそう。
さらに、今までに見つかっているうんこの化石を紹介。そのほかにどんな化石が見つかっているかや、地球ではこれまで何度か大量絶滅が起きていて、化石が見つかっていない古生物も多くいることなど、古生物学と化石についてわかりやすく説明してくれます。しかしここで気づかされるのが、うんこ化石が見つかったとしても、それがすぐにうんこの化石だとはわからないこと。そしてうんこの化石だとわかっても誰のうんこかはさらにわからないということです。
そこで本書ではうんこ化石の持ち主を犯人に見立てて推理ゲームをスタート。うんこ化石のどんなところに着目して持ち主を割り出すかを教えてくれます。
我が家の小2長男はここで本書に完全に引き込まれた様子。「同じ地層から骨化石が見つかった動物が、うんこ化石の犯人である可能性が高いんだって!」と読みながら私に教えてくれました。
そしてもう一つ長男がひときわ目を輝かせていたのが、「うんこくんの大冒険」という陸上生物のうんこが化石になるまでを描いた冒険物語。微生物に分解されかけたうんこくんが硬い化石になるまでが物語で説明されています。うんこはその周辺にカルシウムがあると、分解されるときに出るリンと化学反応を起こしてアパタイトという鉱物に変わる場合があります。このアパタイトになって地層の中で保存された場合のみ、うんこ化石になるのです。と、普通に話しただけでは小2には難しいと思うのですが、挿絵つきの物語のおかげでイメージできたようでした。
終盤にはどんな地層から化石が見つかりやすいか、古生物学者は今生きている動物をどんな視点で観ているかなど古生物学全体の話も。リンを多く含む骨や肉を食べない草食動物のうんこ化石がなぜ発掘されているのかなど、解明されていないことがいまだにたくさんあると知った長男は「僕がその謎を解き明かす!」とすっかり古生物学に魅了された様子。
子どもが読み切れる分量の中でうんこ化石のことだけでなく、古生物学そのものの楽しさまで飛躍することなく伝えてくれる。まとめ方が素晴らしい一冊です。5歳次男は全部自分で読むのは難しいようでしたが、先述したクイズと物語に引き込まれ、その後何度か「ここ読んで」と持ってくることも。幅広い年齢で、親子も一緒に楽しめる一冊です。
文=原智香