杉野遥亮が選んだ1冊は?「日本古来の“心”がここにある。僕にとっては人生の教科書のような一冊」
公開日:2024/7/12
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年8月号からの転載です。
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、杉野遥亮さん。
(取材・文=倉田モトキ 写真=干川 修)
「今の時代、SNSやAIなどの進化が“=新しさ”だと思われがちですが、精神的な意味での人としての“新しさ”が、この本には書かれているなと思ったんです。僕が大事にしている考え方や価値観とも似ていて、共感しましたし、励まされました」
アートを学びにアフリカの村を訪れた著者(SHOGEN)が村人たちから教わった、幸せに生きるための思考の数々。杉野さんは「人生の教科書のような一冊」と話す。
「よく、心にゆとりをと言いますが、それは忙しさの中で時間を作ることだけではなく、どんな物事に対しても喜びや感謝の気持ちを忘れないことだなと。日本にも古くから八百万の神という考えがあり、万物に宿る魂に対して畏敬の念を持つことを大事にしてきました。村人たちと同じ精神が、潜在的に日本人の心にもあるんだと嬉しくなりました」
特に印象的だった言葉は、〈自分の喜びにどこまでも寄り添い、その喜びを素直に表現して生きる。それが歓喜する人間です〉という一文。
「もちろん、生活のすべてをこの本の通りにする必要はないと思います。ただ、こうした考え方もあると知っているだけで、生き方に変化が生まれる気がします」
「原作を読み、不思議な世界観だなと感じました。クスクスっと笑えて癒やされる。ただ、これを実写化するのは危険だぞとも(笑)」
努力を嫌い、日々サボることに一生懸命な武士校生の磯部磯兵衛。脱力系時代劇コメディとして人気を博したコミックが、杉野さん主演でドラマ化。オファーを受け、「面白い作品になりそう!」という期待感があったそうだ。ならば“危険”とは?
「笑いの要素だけじゃなく、ブラックな部分などもあり、作品の本質を深いところまで理解していないと怖いなと思ったんです。でも、脚本と監督が細川徹さんだと知ってからは大船に乗ったつもりでいました」
共演者には檀れいや鈴木福など、豪華俳優陣が顔を揃える。
「母親役の檀さんが品の良さを漂わせながらとぼけたことを言う。それが本当におかしくて。福君は原作をすごく読み込んできていました。その姿は中島役そのもの。磯兵衛とのデコボコ具合を楽しんでください」
撮影を終え、言い訳ばかりで成長の兆しもない主人公らしからぬ今回の役に「“お芝居とは”という謎や課題がさらに深まりました」と笑う。
「でも彼は自分の幸せを常に追求している。その生き方には憧れますね」
ヘアメイク:KOTARO スタイリング:伊藤省吾(sitor)衣装協力:ジャケット6万9300円/ワコマリア(パラダイス トウキョウ TEL03-5708-5277)、パンツ3万6300円/ギャルリー ヴィー(ギャルリー・ヴィー 丸の内店 TEL03-5224-8677)、他スタイリスト私物 *すべて税込
連続ドラマW-30『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ~』
原作:仲間りょう『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』(集英社ジャンプC刊) 脚本・監督:細川 徹 出演:杉野遥亮、鈴木 福、長濱ねる、檀 れい他 WOWOWプライムで7月12日(金)より放送・配信スタート ●立派な武士になることを目指しながらも、怠惰な日々を過ごす磯部磯兵衛。天才発明家・平賀源内に影響を受けることもなく、宮本武蔵の幽霊に自堕落さをツッコまれながらも、彼は楽をして幸せになる道を模索していく。 (c)仲間りょう/集英社 (c)WOWOW