「ポスト呪術廻戦」とも呼ばれる『カグラバチ』。“国重”の妖刀で戦う人殺したちの物語の見どころは?

マンガ

公開日:2024/7/30

カグラバチ"
カグラバチ』(外薗健/集英社)

『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)、『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)に続きブレイクすると注目されている「週刊少年ジャンプ」作品が、次にくるマンガ大賞2024「コミックス部門」にもエントリーされた『カグラバチ』(外薗健/集英社)だ。本作が初めての連載と思えぬ画力とストーリー展開、連載当初から海外ファンを中心としたネットミーム現象の盛り上がりと話題性もある。次世代を背負う作品にのし上がるであろう本作の魅力をご紹介したい。

 六平千鉱(ちひろ)は刀匠の父の下で日々修行に励んでいた。父・国重(くにしげ)は6本の妖刀を生み出し、18年前の戦争を終結させた英雄であった。妖刀は国重の手によって保管されていたが、3年前のある日3人の妖術師によって国重は殺され、妖刀も奪われてしまう。父の妖刀に込める信念を継ぎ、父を殺した妖術師組織「毘灼(ひしゃく)」を追いかける千鉱の復讐の旅が始まる。

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 まず注目したいのは、バトル漫画の醍醐味である戦闘シーン。千鉱は父が残した7本目の妖刀「淵天」を武器に戦うのだが、刀の所作に美しさとダイナミックさがある。そしてコマ割りと構図は戦闘の躍動感が伝わり一気にテンションを上げてくれる。

 次に、緩急をつけた物語のテンポが心地よい。第1話の冒頭から繰り広げられる千鉱と国重の会話は緩さしかない“親子コント”のようであった。冷静沈着な千鉱に対して、国重をはじめとする千鉱の周囲にいるキャラクターはどこか抜けている発言が多い。そんな彼らに淡々とツッコむ(それは時に心の中だけの時もあるが)千鉱がなんとも愛おしいのだ。

 個人的な好みの問題ではあるだろうが、戦闘シーンが長すぎると離脱しやすいという話を先日友人から聞いた。私自身も白熱した戦闘シーンが続くと途中で集中力が切れてしまう経験はある。そういった意味で本作は物語の展開も早く、緩急のあるテンポで多くの読者をイッキ読みへ誘引するであろう。

 最後に六平千鉱にあるダークヒーローな一面に注目したい。ご存じの通り、正義とは見る角度によって悪とも取れてしまう。千鉱にとっての正義とは、父の作った妖刀は悪用すべきものではないという思いである。妖刀を持つにふさわしくない人間に対して、彼は容赦無く自身の妖刀を振り下ろす。そこには自分こそが父のことを一番理解しているという強い自負もある。

 最初の強敵となる双城(そうじょう)はいわゆる“国重マニア”であった。そんな彼はこう言い放つ。

「俺は俺の信念にしたがって妖刀を振るうだけだ 殺戮兵器として」
(引用172ページ)

 千鉱と双城、どちらも国重の妖刀を持つには自分がふさわしいと信じている。そしてどちらも人殺しである。第1話の「刀は人を殺す道具であることに変わりはない」という国重の言葉がここに来て刺さった。

 双城編を終え、2024年7月4日に発売された第3巻から楽座市編へと突入する。自分の信念を遂げるまでに、どれほどの犠牲を千鉱は負うのだろうか。だが、その先には多くの人を救う未来があると信じて千鉱は突き進んでいく。この物語を長く、そして最後まで見届けるために、いま皆で応援していきたい作品だ。

文=ネゴト/ Micha

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