「自担の悪口は、自担本人でも許さない!」 アニメ化も決定した今一番アツいアイドルマンガ『多聞くん今どっち!?』
公開日:2024/7/5
「推し活」という言葉を聞くようになってからしばらく経ち、いまや多くの人に推しがいる時代。少女漫画にもアイドルとの恋愛をテーマにした作品がいくつか見られるが、その中でも異彩を放っているのが『多聞くん今どっち!?』(師走ゆき/白泉社)。多聞くんの誕生日である6月12日にはアニメ化も発表し、“多聞くん”というワードがSNSでトレンド入りするなど、今一番アツい“アイドル×ファン”のラブストーリーだ。
イケ原くん、ジメ原さん……多聞くんのギャップがすごい!
本作の主人公は、大人気アイドル・F/ACE(フェイス)の福原多聞くんを推す高校生・木下うたげ。
ある日ハウスキーピングのアルバイトで向かった先が、なんと多聞くんの家だった……!というのが本作のあらすじだが、そこで出会った多聞くんは表でのセクシー&ワイルドな「イケ原くん」とは真逆のジメジメド陰キャ。(うたげは「ジメ原さん」と呼ぶ。)実は素の多聞くんは自己肯定感激低、ことあるごとに「生まれてきてごめんなさい」と部屋の隅にうずくまる人間だったことが判明する。
アイドルという夢とファンのため、オレ様系アイドルを演じている多聞くん。時々スイッチを切り替え間違えて、うたげだけに見せるアイドルモードは破壊力抜群。最新8巻にもキュンシーンが満載だ。
コミュ障なのになんとか握手会を成功させようと練習するなど、アイドルでいることには一切妥協なし。いつもファンのことを考えている一生懸命さを見ていくうちに、ジメ原さんの方も愛しく思えてくるから不思議だ。巻を追うごとに、うたげにだけなつく子犬のような可愛さが増していくジメ原さん。本作ファンの中にはジメ原さん推しも多いとか(私もジメ原さんの方が好きです!)。
うたげの反応がガチファンそのもの
オーディション番組放送中から多聞くんを推していたうたげは、生活のほとんどが「多聞くん」ないわゆるガチファンだ。そんな彼女は「多聞くんの悪口を言う人はたとえ本人でも許さない」と、卑屈になったジメ原さんには相手が推しでも怒涛の説教。そのワードセンスが、推し活をしている人なら共感まちがいなしの面白さ。
ギャグ漫画なのかな?と思ってしまうほど笑ってしまうのも本書の良さだ。
箱推しまちがいなし! 他メンたちもキャラが濃い
多聞くんのグループ・F/ACEは5人組。最初に本作に登場した他メンは王子様キャラの桜利くん。グループの年下組であるふたりは組み合わせとしても人気だが、ある日うたげは桜利くんが多聞くんを罵倒しているところを目撃。
実はビジネス仲良しなことが判明するが、ふたりは新曲のセンター争奪バトルを経てだんだんと本音で話せるようになっていく。その他にもメンバーの裏の顔が判明し、度々問題が起きつつもそれを乗り越えてまとまっていくF/ACE。5人がそれぞれを理解し合い、スターダムを駆け上がっていく様子を読んでいるうちに、まるで実在するグループを推しているような気持ちになっていくのだ。
最新8巻ではメンバー・倫太郎がF/ACEを辞めると言い出した理由が判明。なんとか倫太郎を引き留めようと4人+うたげは試行錯誤する。寡黙キャラだったのにアニメについては饒舌な倫太郎のアニオタぶりと、そして多聞くんのメンバーへの、F/ACEへの思いが炸裂する。
多聞くんを自分の推しだと思って妄想しながら読むもよし、本当に多聞くんを推すもよし。いろんな楽しみ方ができる本作。Xにはうたげの推し活アカウント(@tamonuma2525)もあるため、そちらもチェックしてみてほしい!
文=原智香