子どものイタズラ、怒ってばかりじゃもったいない!? 『パンどろぼう』柴田ケイコさんの新作絵本は、ママに“びっくり大作戦”を仕掛けるクマの子

文芸・カルチャー

PR 更新日:2024/8/8

くまたのびっくりだいさくせん
くまたのびっくりだいさくせん』(柴田ケイコ/白泉社)

 子どもは好奇心いっぱいで遊ぶことが大好き。遊びに熱中するので、服を汚してしまうこともしょっちゅうですよね。大人はそんな子どもをつい怒ってしまうのですが…。

パンどろぼう』(KADOKAWA)で知られる絵本作家・柴田ケイコさんによる新作『くまたのびっくりだいさくせん』(白泉社)にも、いつもどろんこだらけの“くまた”が登場します。

怒られてばかりのくまたは…

くまたのびっくりだいさくせん P2-3
『くまたのびっくりだいさくせん』(柴田ケイコ/白泉社)より

 くまたは、いつもどろんこになってママから注意されてばかり。つまらないので、ママをびっくりさせて「くーちゃん、さすがね!」と言われたい、と考えます。

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 紙皿の上に石を並べてママの顔をつくったくまたは、ママから「まぁ、なんて じょうず」「さすがね~!」と褒められ、もっとママをびっくりさせるために、さまざまな仕掛けをつくってみることにしました。

くまたの“仕掛け”がたまらないかわいさ

くまたのびっくりだいさくせん P8-9
『くまたのびっくりだいさくせん』(柴田ケイコ/白泉社)より

 最初につくったのは「くさカップ」。ママのお気に入りのカップに、きれいな葉っぱと、くまたの大好きなダンゴムシをいっぱい入れたものです。自分の好きなダンゴムシをママも好きだろう、と考えているのかもしれません。

 次に仕掛けたのは「くつベッド」。ママの靴のなかにお人形を寝かせ、ハンカチをかけてあげたものでした。“靴が人形のベッドにぴったり”という発見をママに伝えたい、というくまたの気持ちが絵本から伝わってきます。

“イタズラ”と思うようなことばかりで、自分だったら怒ってしまいそう…と筆者は思いました。でも、くまたが望むのは、ママを悲しませたり怒らせたりすることではなく、ママをびっくりさせることなんですよね。

 大好きなママのために、ママの目につくものや、ママが使うものにばかり大作戦を仕掛けるくまたの姿は、たまらないかわいさ。こんなに健気で素直な気持ちを“イタズラ”と言って怒ったりしてはいけないな、と大反省です…。

くまたの“仕掛け”を見たママの反応は?

くまたのびっくりだいさくせん P6-7
『くまたのびっくりだいさくせん』(柴田ケイコ/白泉社)より

 くまたの大作戦を目撃したママの表情にも注目です。ダンゴムシがいっぱいの「くさカップ」にはゾッとしたようですが、「くつベッド」にはプッと笑っている様子。そして、何かを考えるような表情を見せたあと、くまたが“セミのぬけがら”をいっぱいくっつけた帽子を、そのままかぶって出かけてしまいました…。

 そんなママを、「あれれ?」「きづいてないのかな?」と不思議そうに見つめるくまた。本書をお子さんに読み聞かせするときは、くまたと一緒になって、ママが驚かない理由を考えてみてはいかがでしょうか。

子どものイタズラを愛おしく思える絵本

 くまたの存在を感じながら想定外の行動に出るママ。ラストには、ホロリとするような場面が待ち受けています。

 大人がイタズラだと思っていることも、子どもにとっては大好きな人をびっくりさせるための壮大な仕掛け。本書を読めば、「今度は子どもの“仕掛け”を怒るのではなく楽しんでみよう」という気持ちになるのではないでしょうか。お互いを思い合う親子の尊い関係が、“仕掛け”を通して、柴田ケイコさん流に表現された絵本だと感じました。

 ちなみに、柴田ケイコさんの代表作のひとつ『パンどろぼう』の原画展が2024年8月16日から東京の松屋銀座で開催され、原画作品やラフスケッチが展示されるとか。

 本作でも、柴田さんの描くキャラクターのかわいらしさは健在。ママを見つめるときのさまざまな表情がとてもキュートなくまたは、また新しい人気キャラクターとなりそうな予感です!

文=吉田あき

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