にわとりが産むたまごは1日ひとつだけ! 「たいせつなたまご」があなたの食卓に届くまでを、美しい写真絵本で
PR 更新日:2024/8/8
以前、幼い子どもたちの中に「海には〈切り身〉の魚が泳いでいる」と誤解している子がいると噂されたことがある。真偽のほどはわからないが、実際、スーパーで目にする食べやすく加工された食材とリアルな生き物の姿は大きく違うので、下手すればそんなふうに思ってしまう子がいたっておかしくない。大人にしたってなんとなく「魚」はイメージできても、詳しい魚の種類までは思い描けない人もいるんじゃないだろうか。あるいは、その食べ物が「どうやってここまで来たのか?」まではよくわからないという人もいるだろう。でも、ちょっと待って。実際に「食べる」ものなのに、こんなに知らないままでいいんだろうか?
しゃしん絵本作家・キッチンミノルさんの新刊『たいせつなたまご』(白泉社)は、そんな私たちに、身の回りにある食べ物についての大切な気づきを与えてくれる社会科見学的な一冊。「たまご」がどんなふうに生まれて、どうやって私たちの手元に届くのかを、生き生きとした写真とやさしいまなざしで伝えてくれるのだ。
舞台となるハコニワ・ファームは平飼い(平らな地面の上で放し飼いの状態で飼育する方法)でにわとりたちを育てる栃木県真岡市の養鶏場。日の出とともにスタッフさんたちが心を込めてにわとりたちのお世話をし、にわとりたちもそれに応えるように元気に餌を食べ、水を飲み、1日1個たまごを産む。そのたまごが集められ、丁寧に洗浄されて私たちの手元へ――最後は美味しそうな「たまごかけごはん」がどーんと現れて、思わずほっこり。
どのページからも生産者さんたちの「まごころ」が伝わってきてうれしくなるし、ここまで「たいせつ」に私たちの手元まで届けられていることを知るのは、ちょっと感動的ですらある。ちなみに写真だからこそ、伸びやかに自由に生きるにわとりたちの姿がリアルに伝わってきて、そのハッピーな感じに「本当に愛情がこもってるんだなぁ」と実感。ちなみに外国では生卵を食べることができないとされているが、日本はこういうこまやかで丁寧な工程があるから大丈夫なわけだ。あらためて「ありがたいなぁ」と思う。
この本では「たまご」が主人公だが、キッチンミノルさんの前作は『たいせつなぎゅうにゅう』で、北海道の酪農家の仕事を追いながら牛乳がどうやって私たちの手元に届くかを描いている。どちらの本も生産者の思いがあふれていてグッとくるが、私たちが普段何気なく食べているいろいろな食べ物の裏にだって、きっとこの本と同じようなさまざまな人の努力&思いがこもっているに違いない。
そんなことを読みながら考えていると自然に食べ物への意識が変わってくるし、毎日の食事をもっと大切にしたくなるはず。親子で楽しめば「あの食べ物はどうやってうちまで届くんだろう?」と会話も広がりそうだし、もしかしたらお子さんの好き嫌いだって減ってくれるかもしれない!? もっともっといろんな食べ物が「たいせつ」に届くまでを知りたい――早くもシリーズ続編を期待してしまう。が、その前に、明日の朝ごはんは「たまごかけごはん」に決定!
文=荒井理恵