ちょっと絡まれただけで即気絶⁉︎重度なコミュ障の“ギリギリ異世界ライフ”を描いた『コミュ障、異世界へ行く』
公開日:2024/7/5
ゲームや漫画で憧れる異世界。自分もその世界に入ってみたい!と一度は思ってみるものの、いざ迷い込むと超ハードモード!?
ハラハラする命のやりとりが目の前の現実で繰り広げられることに加え、主人公は重度のゲーマー&超絶コミュ障。“他人に協力を求められない”というあまりにも絶望的な状況の中で、それでも持ち前の異世界知識で日々死線をくぐり抜ける──。
そんな一風変わったギリギリ異世界ライフを描くのが、LINEマンガ インディーズ発の『コミュ障、異世界へ行く』(山下将誇:原作、宇上貴正:作画)。「次にくるマンガ大賞 2024Webマンガ部門」にノミネートされ、注目を集めている作品だ。
主人公であるジュンペイは重度のコミュ障。生まれた瞬間からそのコミュ障っぷりが発揮されていた彼だが、その性格は大人になっても変わらないまま。
なるべく他人と直接関わる機会を作らず生きてきた、そんな彼の趣味はゲーム。中でも今はスマホゲーム、剣と魔法のファンタジーにどっぷりハマっている。
ゲーム内の職業は召喚士。やや扱いの難易度が高い職業だが、召喚士であれば誰かとパーティを組まずとも、自分の召喚獣とだけでパーティが組めるのだ。
ゲーム中でもコミュ障な彼にはぴったりの職業だったが、スキル面で大きなハンデを抱える分、人よりやりこみも必要になる。そんな理由でスマホゲーに没頭するジュンペイだったが、度重なる徹夜&エナドリの過剰摂取がたたり、気づけば28歳でそのままポックリ死んでしまった。
一度意識を失った彼。次に気が付くと、目の前に広がっていたのは先ほどまで必死でやり込んでいたスマホゲーの世界! 作り込んだキャラメイクと職業「召喚士」のまま異世界へ迷い込んだ彼だが、ランク・スキルは初期値からのリスタートに。
召喚獣1匹すらろくに召喚できないジュンペイは、元の世界に戻れるのか? いや、そもそもこの世界で無事に生き残れるのか…? そんな“ギリギリ異世界ライフ”が本作では描かれている。
まずやはり作品の面白さであり、ついクスッとしてしまうツッコミどころでもあるのが、極端すぎる主人公・ジュンペイのコミュ障っぷり!
近くに他人がいるだけですぐ死にそうになる彼。しかし作り込んだイケメンなキャラメイクとのギャップも面白く、加えてそのイケメン具合がコミュ障としては大きな仇になる一幕も…。
また異世界の空気感や世界観をたっぷり楽しめるのも本作のポイント。中でもやはりジュンペイにとっては人間以上に身近な存在である、召喚獣たちのかわいさ・格好よさも大きな魅力だ。
同じ人間相手にはまったくコミュニケーションが取れない彼だが、過酷な旅を共にする召喚獣たちには思いやりある一面を見せる場面もたくさん。最初はジュンペイ同様非力な存在だった召喚獣たちが、彼の頑張りに応え少しずつ成長していくところも見どころだろう。
そして何より一番の作品の魅力は、異世界で非力な人間が生きることの“リアルさ”がしっかり描かれている点だ。
普段ゲームや漫画では透明化されるような生活費の話や、敵とのバトルの際に蓄積していくダメージ・痛み。それらも非常に現実味ある表現で描かれるため、「異世界で暮らすこと」の実際の大変さが、私たちにも容易に想像できる。
普通に異世界に迷い込んだ人間ならすぐに死んでしまうだろう。しかし結果としてジュンペイの才能のひとつになったのが、「異世界に対する知識の豊富さ」だ。
ゲームとしてこの世界を一度体験している彼は、いわばこの世界における“神視点”を持っていることになる。しかし、慣れない世界で四苦八苦するジュンペイ自身は未だこの自分の特異さに気づけていない。彼が極度のコミュ障、つまり「比べる対象となる他人と一切関わっていない」のが、その理由である点も大きなポイントだろう。
物語の中ではそんなジュンペイより早く、周囲の人間たちが少しずつ彼の特異性に気づき始めている様子。それに伴い、彼の住む町の周辺でも徐々に異変が起こり始める。
召喚士・ジュンペイはこれから異世界で、どのように成長していくのか?
そして彼には、元の世界に戻る方法が残されているのか?
さらにこの異世界に起こっている異変と、その理由は一体何なのか?
気になる謎がまだまだ満載の本作。先の展開も気になること間違いなし!の一作となっている。