実家を無断で売った。ギャンブル中毒者の思考回路
公開日:2024/7/20
YouTuberになって人生逆転を果たしたホームレスをご存じですか?
ナム氏は20代後半の頃からギャンブルにはまり、日雇いの仕事をしながら全国のボートレースを追いかけていました。しかし、年齢を重ねると仕事もなくなり、気づけば横浜・関内の地下通路でホームレス生活を行うことに。
「一緒にYouTuberをやりませんか?」
いつも通り、地下通路で寝泊まりしていると、ある人からそう声をかけられました。「ヒマだから」とYouTubeを始めると、瞬く間に登録者が伸びていきました。無一文の路上生活者だったのに、気づけば登録者40万人のYouTuberへ。それはまさに地獄から天国へと舞い上がる出来事でした。
そんな天と地の両方の景色を見てきたナム氏がこれまでの人生を振り返りながら、ホームレス生活を通して得た人生哲学を紹介するエッセイ『ホームレスが大富豪になるまで。 YouTubeで人生大逆転!どん底から這い上がるには』をご紹介します。
※本記事は『ホームレスが大富豪になるまで。 YouTubeで人生大逆転!どん底から這い上がるには』(ナム/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました
コンビニに行く感覚で実家を売った
俺のことを恨んでいる人はたくさんいると思うけど、家族はその筆頭かもしれない。なんせ俺、30代半ばのときに、実家を売りに出しちゃったから。
理由はもちろんボートだよ。ボートで負けが込んで、あらゆるところからお金を借りて首が回らなくなって、実家を売るしかなくなった。両親が家にいない時間を見計らって、タンスにあった家の権利書と実印を、その筋の人に渡したの。1500万円くらいにはなったかな。
そのお金も2週間くらいで使い切っちゃったけど。
ギャンブルのために実家を無断で売りに出すなんてとんでもないよね。でも、博打沼にハマってる人間から言わせれば、すごくシンプルな話。タバコがなくてコンビニまで買いに行く。財布にお金が入ってない。だから家を売ってお金をつくる。それだけの話なんだよ、これは。
俺が実家を売った話についてはよく質問されるし、聞きたがる人が多い。それだけ信じられない行為なんだろう。確かに俺も、今となっては、やべえヤツだったなって思うけど、ギャンブル中毒の思考回路ってこうなの。沼にハマっている人間に、倫理とか道徳とか説いても意味ないよ。コンビニ感覚で実家売るんだからさ。
俺、家族とはほとんど連絡を取り合ってなかったし、実家を売った後もずっと音信不通だから、オヤジやお袋や兄貴がどうなったかは知らない。オヤジは死んだって聞いたけど、今は多分、お袋も死んでるんじゃないかな。兄貴は生きてるだろうけど、俺の顔も見たくないだろうね。
まあでも俺も、家族とはもう死ぬまで会いたくない。
悪かったなっていう気持ちもなくはないけど、自分のなかで、家族は過去の縁だね。
<第3回に続く>