富士の樹海で同僚に殺されかけた。元ホームレスYouTuberの体験談
公開日:2024/7/21
YouTuberになって人生逆転を果たしたホームレスをご存じですか?
ナム氏は20代後半の頃からギャンブルにはまり、日雇いの仕事をしながら全国のボートレースを追いかけていました。しかし、年齢を重ねると仕事もなくなり、気づけば横浜・関内の地下通路でホームレス生活を行うことに。
「一緒にYouTuberをやりませんか?」
いつも通り、地下通路で寝泊まりしていると、ある人からそう声をかけられました。「ヒマだから」とYouTubeを始めると、瞬く間に登録者が伸びていきました。無一文の路上生活者だったのに、気づけば登録者40万人のYouTuberへ。それはまさに地獄から天国へと舞い上がる出来事でした。
そんな天と地の両方の景色を見てきたナム氏がこれまでの人生を振り返りながら、ホームレス生活を通して得た人生哲学を紹介するエッセイ『ホームレスが大富豪になるまで。 YouTubeで人生大逆転!どん底から這い上がるには』をご紹介します。
※本記事は『ホームレスが大富豪になるまで。 YouTubeで人生大逆転!どん底から這い上がるには』(ナム/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました
富士の樹海で同僚に殺されかけた話
周囲から恨みを買う人生。さもありなんとも言うべきか、俺自身が死にそうになったことも何度もある。
あれは、俺が40代の頃。
ある建設現場で働いていたときのこと。一緒に住み込みで働いていた同僚に、頭の悪いヤツがいた。仕事が全然できなくて、みんなにパシリに使われてるようなヤツだよ。いつも鼻水垂らしててさ。
そいつが、寮の他の従業員の金を盗んだの。で、俺に「金を持って一緒に逃げよう」って持ちかけてきたわけ。
びっくりしたよ。お前、そんな度胸あったのかよってね。
俺もちょうど退屈しててさ。ここにいても面白くないし、バックレたろかと思ってたところだったの。で、車を持ってたから、金を持って2人で逃げたんだよね。
でも途中で、そいつといることが煩わしくなってきた。なんせ頭の悪いヤツだったから、一緒にいても損するばっかりなんだよ。寝しょんべんとかするしさ。
だから逃げてしばらくしてから、車を売っぱらって、その金を折半して、そいつとはオサラバしたんだよね。俺たち、別々の道を行こうぜってね。
そしたらあろうことが、そいつ、俺と別れて元の建設現場に戻っちゃったんだよ。何考えてんのか知らないけどさ。多分、1人になって不安になっちゃったんだろうね。本当にバカなヤツだった。
ある日突然、そいつから電話がかかってきてさ。「会いたいから、○○駅まで来てくれ」と。そのときはまだそいつが元の現場に戻っていることなんて知らなかったから、俺、のこのこと待ち合わせの駅まで行ったわけ。
で、駅に着いたらそいつが立ってて、「おう」って声をかけた瞬間、陰に隠れてた現場の他の従業員と社長が出てきたんだよ。驚く暇もなく、ヤツらに首根っこ摑まれて車に押し込まれた。目隠しさせられて、「お前、自分がやったことわかってるよな?」ってね。
こんなドラマみたいなこと、ホントにあるんだって思ったよ。ドラマだったら、行き先は海か山だよね。
俺の場合は後者だった。車が止まって、外に放り出されると、そこは自殺で有名な富士の青木ヶ原樹海だったんだ。
森のなかまで歩かされてさ。適当な場所に着いたら、人が入るくらいの穴を掘り始めるわけ。
で、社長が、俺を罠にかけたアホなヤツに大きな石を持たせて、「お前がやれ」と言うんだよ。そいつに俺を殺させようとしたわけだよね。さすがに「俺、ホントに死ぬんだな」って観念したよ。
ところがそいつは、「世話になったから殺すことはできない」って、泣きじゃくりながら拒んだ。それを聞いた社長が俺に、「それならナム、お前にチャンスをやる。今から家族に連絡して、金を用意しろ。それができたら命は助けてやる」って言ったんだよ。
俺はすぐに、上の兄貴に電話した。親はもう長いこと音信不通で生きてるかどうかもわからなかったからね。まあ、上の兄貴も、連絡取ったのは十数年ぶりだったんだけど。
で、兄貴の回答は実にあっさりしたものだった。
「金は用意できないから、好きにしてください」ってね。
目の前が真っ暗になった。俺も実家売ったりいろいろ迷惑かけてるからしょうがないんだけど、やっぱり人間、死にたくないよ。で、足はガクガク、鼻水ダラダラ垂らしながら、「どうか助けてください、もう一度チャンスをください」って社長に懇願してさ。
結局、助かったんだけどね。
実はもう一度だけ死にかけたことがあって。
いつだったか忘れちゃったけど、休みの日に魚釣りに出かけたんだよね。釣り竿持って自転車こいでたんだけど、前からキレイなお嬢さんが歩いてきたわけ。それに見とれてたら、竿がタイヤに絡まって、すごい派手に転んでさ。
あのときも死ぬかと思ったなぁ。
死の瞬間って、意外とそこら辺に転がってるもんだよね。
<第4回に続く>