号泣必至の感動作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』続編! あの少女と特攻隊員、仲間たちの「その後」…

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更新日:2024/8/12

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。Another"
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。Another』(汐見夏衛/スターツ出版)

 生きのびることが罪とされた時代。その残酷さを自分のことのように感じさせてくれる小説が、この夏も大きな話題を呼びそうだ。終戦間近の日本にタイムスリップした現代の女子中学生と、特攻隊員の青年のラブストーリー『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(汐見夏衛/スターツ出版)。昨年、福原遥と水上恒司のW主演で映画化されたことでも記憶に新しいこの作品の待望の続編『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。Another』(汐見夏衛/スターツ出版)がついに刊行されたのだ。中高生を中心に「とにかく泣ける」とTikTokで大バズりした前作同様、本作も涙なしに読むことができない。平和な時代を生きていると、戦争なんてどこか遠い出来事のように思えてしまうが、この本を読めば、とてもそうは思えない。戦争によって運命を狂わされた若者たち。彼らの抱え続けた思いが、痛いほど、私たちの胸に迫ってくる。

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 前作は、現代を生きる中学2年生の少女・百合の視点で描かれる物語だった。1945年6月、終戦間近の日本にタイムスリップしてしまった百合は、彰という青年に助けられ、彼に惹かれていく。彼女は、彰に案内された食堂で生活することになるのだが、たびたび店を訪れる彰やその仲間たちはみんな明るく優しい人ばかり。しかし、彼らは特攻隊員。ほどなく命を賭して戦地に飛ぶ運命を担っていた。

 その続編にあたる今回の作品はスピンオフ短編集。人気の登場人物たちの「その後」があらゆる人物の視点で描き出されている。自分の気持ちを最期まで口にしなかった彰はどんな思いを抱えていたのか。どんなに厳しい状況でも明るく人を笑わせ続けた、特攻隊員・石丸は、何を考えていたのか。特攻を前にした男たちの心にあるのは、「本当は生きたかった」という思いだ。自分の使命を果たさなければならないのだから、そんなことは思いたくない。だけれども、愛おしい人のことを考えれば、「もっとそばにいたかった」と思わずにはいられない。

 そして、死せる者たちと同様、生き残った者たちだって皆、悩み苦しんでいる。一番、強く胸打たれたのは、特攻隊員・石丸と思い合っていた少女・千代のその後の姿だ。彼女は、石丸からもらった「君は絶対に幸せになる」という言葉を胸に、戦争が終わった後も強く生き続けた。そして、94歳という年齢を迎えた時、その思いをそっと孫に吐露する。その一途な思いはあまりに美しいからこそ悲しい。時代が時代なら結ばれるはずだったふたり。「ともに生きる」という、今では当たり前のことが許されなかった時代の理不尽さには眩暈すら感じる。

 たくさんの罪なき命が奪われる戦争。この物語には、その不条理さが描き出されている。今、会いたい人に会えるということ、大切にしたいものを大切にできるということは、どれほどかけがえのないことか。戦争など、二度と起こしてはいけない。戦争を過去のものにしなければいけない。この本を読めば、平和を願わずにはいられない。厳しい時代を生き抜いた人のその後の姿に、きっとあなたも、心揺さぶられる。世界で戦争が起きている今だからこそ、読んでおきたい作品だ。

文=アサトーミナミ