不思議なコンビニが紡ぐ奇跡の物語―― 村山早紀の人気シリーズ新作『コンビニたそがれ堂 夜想曲』に反響続々

文芸・カルチャー

公開日:2024/8/15

コンビニたそがれ堂 夜想曲
コンビニたそがれ堂 夜想曲』(村山早紀/ポプラ社)

 魔法のコンビニ「たそがれ堂」、大事な探しものがある人は、必ずここで見つけられるという――。作家の村山早紀が手掛ける人気シリーズの新作『コンビニたそがれ堂 夜想曲』が、2024年7月上旬に発売され、話題となっている。本編としては約4年ぶりの続刊にもかかわらず発売早々に重版が決まり、ファンからは「待っていました」と大きな反響が寄せられている。

 村山早紀は 『シェーラひめのぼうけん』など児童文学の名作から、『桜風堂ものがたり』、『百貨の魔法』などの本屋大賞ノミネート作、最近はSF作品や猫のエッセイを刊行したりと、多彩な活躍をしている。ファンタジックな世界を舞台にした心温まるストーリーに定評があり、老若男女問わず幅広い層から支持を集めているが、中でも「コンビニたそがれ堂」シリーズは2006年から発表され続けている長寿作品で、累計発行部数は50万部を超えたという。

 風早という町に存在するという不思議なコンビニ「たそがれ堂」には、誰もがたどりつけるわけではない。古い路地、赤い鳥居の並んでいる辺りにあったと噂されるが、「大事な探し物」がある人だけが行き着けるのだ。そこではこの世で売っているものはなんでもあり、売っているはずのないものまでそろっている。そんな魔法のコンビニを舞台に、様々な人々の物語が紡がれていく――。

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 今回の新作『コンビニたそがれ堂 夜想曲』では、離別した家族が暮らす故郷で演奏をする有名ピアニスト、事故で生霊になってしまった女性、地球の生活に溶け込んだ二人の異星人といった人たちが「たそがれ堂」へと導かれていく。4話目の『天使の絵本』は『コンビニたそがれ堂 セレクション』という単行本のみに収録されていた作品の再録だが、この世に存在しない「絵本」をめぐる物語で、「本」への深い敬意とを愛情を感じる一篇だ。

 ファンタジックな設定とバラエティーに富む人間ドラマで紡がれる「コンビニたそがれ堂」シリーズは、ひとの声が耳元で聞こえてくるような優しい語りが印象的で、年若い読者にとっても読みやすいだろう。だが、限りある生の厳しさを知る大人にこそ、深く届く言葉なのかもしれないとも思う。連作短編のシリーズなので、途中から入っても問題なく楽しめる。この機会にぜひ、心温まる“村山ワールド”の扉を叩いてみてはいかがだろうか?

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