アニメも話題のヤンキーマンガ『WIND BREAKER』。彼らが守るものは町の治安…新時代ヤンキーの魅力を解説

マンガ

更新日:2024/7/26

WIND
WIND BREAKER』(にいさとる/講談社)

 あの学校は不良高校でヤバい、その制服の生徒には気をつけて……、子供の頃そういった噂を聞いたことがある。最近ではあまりそういった話を私の地域では聞かなくなったが、ヤンキー漫画はなくなったりはしない。彼らの生き様にはどこか美学やカッコ良さを感じてしまうのはなぜだろうか。

WIND BREAKER』(にいさとる/講談社)は、今話題沸騰中のヤンキー漫画。アニメも4月から放送中だ。まだ見ていない人は動画配信サービスもあるため、ぜひ観てほしい。

 物語の舞台となる風鈴高校の生徒は、街の風紀を乱すような、不良たちの集まりかと思いきや、意外にも“ボウフウリン”と名乗り街を守る存在だった。口も悪いし、見た目もヤンキーそのものな彼らは、街を愛し守るためにこぶしをふるっている。

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“これより先
人を傷付ける者
物を壊す者
悪意を持ち込む者
何人も例外なくボウフウリンが粛清する”

 と、街の入り口には掲げられている。これは、風鈴高校の生徒が誰かを守るために戦う時にも言う口上だ。ボウフウリン(防風鈴)とは、街の盾として活躍する彼らに街の人たちが呼びはじめた名前。風鈴高校の生徒たちは、街をパトロールし、困っている人がいたら率先して助け、街のみんなから愛されている。

1巻 0001

 主人公の桜遥(さくら・はるか)は、風鈴高校を普通の不良高校だと思い、頂点を目指そうと街の外から1人でやってきた。バイカラーの瞳と髪が印象的な彼は、何事も1人でするのが当たり前で、はじめは仲間を作るなんて考えていなかった。しかし、彼の隠れたやさしさと強さに気付いた同級生や先輩たちに受け入れられ、風鈴高校でかけがえのない仲間を得ることになる。

1巻0008

“これは…ケンカしか取り柄のない
ド底辺の嫌われ者が
街の英雄になる物語だ”

 と1話の最後にある。桜は仲間と共にボウフウリンとして街を守り、ケンカを通して成長していく。

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 桜はケンカがとてつもなく強い。一方で、すぐ照れて赤面したり目を逸らしたりしてしまうような、不器用だけどまっすぐな性格。しかし、高校に入学するまでは、孤独な生活を送っていた。彼の過去については詳しくは語られていないが、その孤独さの要因は所々で垣間見られる。注目したいのは、7巻の桜が体調不良になるシーンだ。仲間が見舞うシーンで描かれる1人暮らしの住まいは、仲間も言葉を詰まらせるほどさみしく、彼の孤独が伝わってくる。はじめは人に拒絶されることをこわがっていた彼が、仲間と共に過ごすうちに、人を頼り頼られることを覚えていく。

 さらに、バッタバッタと敵をなぎ倒していく、ケンカシーンも必見だ。街の治安維持に努めていると、近隣のチームとのいざこざも発生する。獅子頭連、KEEL(キール)、GRAVEL(グラベル)など次々登場するチームもアクが強い。

 ただ、ケンカして勝ったり負けたりで終わるだけではなく、個人にも焦点が当てられる。なぜ、彼らがその現状に至ったかも掘り下げられるためそれぞれの事情があり、ファーストインプレッションが最悪でも段々憎めなくなってしまう。

 コミックは今17巻まで販売されている。桜たちボウフウリンは街を守るため、学校を守るために戦い続けている。18巻は風鈴がぴったりの時期、8月に発売予定。この夏は風鈴の音で涼しくなれるどころかアツくなれそうだ。

文=山上乃々

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