「間違いこそが宝物」年齢を重ね、失敗が怖くなってしまったら… 若宮正子さんが教える“今”を楽しく生きるコツ

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PR 公開日:2024/7/19

やりたいことの見つけかた 89歳、気ままに独学"
やりたいことの見つけかた 89歳、気ままに独学』(若宮正子/中央公論新社)

 89歳の世界最高齢プログラマー、若宮正子さん。若い頃からコンピューターに慣れ親しんできた方なのかと思えば、彼女がパソコンを習得したのは、勤めていた銀行を定年した後、60歳を超えてからのこと、そして、プログラミングを学び始めたのは80歳を過ぎてからというのだから驚かされる。81歳でつくったスマートフォン向ゲームアプリが世界から注目を集め、その年の米国アップル社による世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待されたほか、翌年には国連総会で基調講演。政府の「人生100年時代構想会議」の最年長有識者メンバーにも選ばれるなど、若宮さんの人生が激変したのは、80代になってからのことらしい。シニアになってから学んだ知識で、そんなにも活躍できるだなんて。私も彼女のように、年を重ねてもパワフルに学び続ける人間でありたい。とはいえ、私には、若宮さんのような能力はないし、歳を重ねるにつれて、趣味もやりたいことも見つからなくなってきて困り果てているけれど……。

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 そんなことを思いながら手に取ったのが『やりたいことの見つけかた 89歳、気ままに独学』(若宮正子/中央公論新社)。若宮さんが、やりたいことを見つける方法、歳を重ねてからの人生の楽しみかたのヒントを教えてくれる本だ。読み進めてみると、意外なことに気づく。「……あれ、若宮さんって意外と普通の人!? しかも、結構おっちょこちょい!?」。行き帰りの飛行機しか決めずに海外への一人旅に出掛ければ、帰りに空港まで行くバスがなく、見知らぬ人に助けられてどうにかトラブルを回避。スマートフォンはいじくりまわしたあげく再起動。英語で講演するほどだから語学が堪能なのかと思えば、英会話教室では落ちこぼれだったし、日常会話もあやしいくらいで、頼りにしているのはGoogle翻訳。——何でも簡単にこなせてしまうような人物を勝手にイメージしていたが、若宮さんの挑戦は七転び八起き。けれども、若宮さんはちっともめげない。この本には、すぐにでも見習いたい、そんな若宮さんのモットーであふれている。

 若宮さんは言う「いくつになってもお勉強しましょうよ」と。若宮さんの言う勉強は「独学」。何かの教室へ通う必要はないし、誰かに強制されてやるのではない。ただ、好きなことを自分から学んでみる。厳しいノルマを決めず、自由気ままに目標だけを決めて、楽しいと感じたことを素直に始めてみるのだ。

 若宮さんに言わせれば、「とりあえず、飛び込んでみたらなんとかなる」。プログラミングを勉強したときも、若宮さんは「シニアも楽しめるアプリが欲しい」と思い、「雛壇に雛人形を正しく並べるアプリゲームを作りたい」という動機でプログラミングを勉強し始めたそうだ。入門書をしこたま買って読んで取り組み、エラーが出て上手くいかないときは、プログラミングに詳しい友人に聞いてみた。すると、友達は、若宮さんの書いたコードがあまりにめちゃくちゃであることに驚き、「これは一般的なプログラムの体を成してないから、アプリの登録をする際に、もしかしたらアップル社からアプリの審査ではねられてしまうかも」と教えてくれたのだという。だが、そんな状態でも、とりあえず、始めてみたからこそ、アプリを完成させることができた。「自分にできるわけがない」と思わなかったからこそ、若宮さんの人生は変わった。

 歳を重ねると、趣味を見つけづらい。たとえ、少しでも興味があることを見つけたとしても、なかなか最初の一歩が踏み出せないものだ。「今更挑戦しても遅いかな」と言い訳したり、「上手くできなくて笑われたら恥ずかしい」と周りの目を気にしたりして、自分で自分にブレーキをかけてしまう。だが、若宮さんは違う。若宮さんによれば、「年をとってからの学びは間違いこそが宝物」。人に頼るのだって、みっともないことではないし、どんなに未熟でも、どんどん人前に出て、やってみることが上達への近道。新しいことを習うときは、恥の意識や見栄は捨て、かっこつけずに挑戦するといいのだと言う。「ダメもと精神」「つまみ食い主義」「自由気まま」で行動している若宮さんの挑戦を知るにつれて、自然と背筋は伸び、口角は上がる。なんて勇気づけられる本なのだろう。あなたも、この本を味方に、自分の心がワクワクすること、今から始めてみませんか。

文=アサトーミナミ

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