時間も空間も歪む魔法に汚染された世界――冒険の旅に出た少女に待つものは⁉︎ 『戦国妖狐』の水上悟志によるファンタジーコミック『最果てのソルテ』
PR 公開日:2024/7/26
何歳になったってワクワクさせられるのが、ファンタジーもののマンガだ。ここではないどこか――異世界を舞台に、主人公たちが冒険の旅へと繰り出す。その世界観設定が優れていればいるほど、心を鷲掴みにされてしまう。
そして、またしてもそんな一作と出合ってしまった。水上悟志氏による『最果てのソルテ』(マッグガーデン)である。
水上氏は、現在放送中のテレビアニメ『戦国妖狐』の作者でもあり、これまでに何作もファンタスティックな物語を描いてきた。そう聞けば、『最果てのソルテ』に期待しないわけにいかない。どれどれとページをめくれば……、そこに広がっていたのは期待以上に胸躍るストーリーだった。
舞台は、過去の戦争によって「魔法汚染」に蝕まれている世界。魔法汚染は時間や空間をも歪めてしまうため、ここでは魔法そのものが禁止されている。そんな世界に生まれたソルテは、魔法汚染によって両親を失った孤児だ。しかし、ソルテはいつだって元気いっぱいで悲愴感を漂わせない。まさに主人公に相応しい少女である。
そんなソルテがひょんなことから旅に出ることになるのだが、やがて見据えた目的は非常に大きなもの。「前人未到の世界の果てを目指すんだ」。そう宣言するソルテの瞳はキラキラ輝いており、主人公然とした佇まいから、自然とその行く末を最後まで見届けたいという思いが湧く。
同行するのは呪いによって不死になったフィロ、精霊病でモグラの見た目になってしまった叔父・ブラック、ソルテに魔法の力を与える妖精のセレン。なかでも、このセレンがポイントで、どうやら彼女はソルテたちと旅をするのが2回目らしい。つまり、セレンはループしているのだ。しかしながら、2回目の旅路にもどんどん想定外の出来事が発生していく。セレンも含め、ソルテたちの冒険は予想がつかず、それがまた、読者の好奇心を駆り立てて仕方ない。
細部の設定がしっかり考え抜かれているのも凄いところ。魔法の在り方やそれを滅する神罰騎士たち、魔界の存在……。そのひとつひとつが絡み合うことで、複雑で奥深い世界観が構築されている。ちなみに第2巻のラストには、思わず「え!」と声を漏らすような謎も用意されていて、この先が一体どうなるのかがまったく読めない。
よくよく考えると、かなりしんどい境遇を持つソルテ。それでも人生を投げ出さず、前を向き続ける姿はとても尊い。ソルテの思いが報われますように。そう願いながらも、ソルテ一行の冒険を楽しんでいきたい。
文=イガラシダイ