新しく引っ越した新居マンション、期待に満ちた新生活。だけどこのマンションには、実はとんでもない秘密があった…。大勢の家族が暮らすマンションで起きる泥沼劇。そしてそこに引っ越してきた一組の家族の悲劇を描いたのが、『不倫マンション　住人たちの乱れた秘密』(緒川琴衣：漫画、 春野せり・テラーノベル：原作 /KADOKAWA)である。

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　夫・桔平の仕事の都合で、新しく「シークレット・パレス」に引っ越してきた高野家。妻・いろはも慣れない新生活が最初は不安だったものの、娘・莉緒の同級生となるご近所さんの助けもあり、少しずつ新しい暮らしに馴染み始めていた。

　だが生活するにつれ、どことなく周囲からの値踏みするような目線や、特定の住人同士の不穏な空気に違和感を覚えるようになる。そんな中、ある日ママ友の石原佑香から「このマンションは”不倫マンション”と呼ばれている」という噂を耳にしたいろは。

　とはいえそんな話はにわかに信じがたく、また家族仲のいい自分にはきっと関係ない。この時のいろはは確かにそう思っていたのだけれど、徐々に怪しい影が忍び寄り始め──!?

　普段どれだけそんな一面を隠していても、大多数の人間にとってやはり人の不幸は蜜の味。とはいえ、現実では原則ご法度とされる不倫。実際にいざ身近にトラブルとして起こると、正直それどころじゃない！ なんて人が多いのも当然である。

　しかし人間は好奇心には勝てない生き物。そんな気持ちを満たしてくれるのが、本作のような不倫などの泥沼劇を描いたフィクションでもあるのだろう。

　不穏な噂が飛び交う不倫マンション。その中でもいろはの友人・佑香のように、彼女の身や家族を案じてくれる人がいる点は心強くて安心だ。いろははマンションに潜む魔の手から、自分の大事な家族を守り切れるのか？ 愛憎渦巻く人間劇から、最後まで目が離せなくなること間違いなし、の一作だ。

文＝ネゴト/ 曽我美なつめ