腎臓は脳や血管などの循環器や糖尿病と深い関係も! 見過ごされやすい「沈黙の臓器」のケアは生活習慣の改善から
PR 公開日:2024/8/7
人間の体内にはさまざまな臓器があるが、中でも腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていることを知っている人は多いだろう。何か異常があったとしても自覚症状がなく、おかしいと思った時にはすでに深刻な事態になっていることが多いためにそう呼ばれている。
腎臓は、へその位置の背中側にあり、成人で縦約10cm、幅約5cm、厚さ約3cm、重さ150gほどの、左右に開いたソラマメのような形の臓器だ。主な働きは老廃物や体に溜まった毒素をろ過する膜で取り、尿を作って体内を浄化すること。コーヒーを淹れる時のコーヒーフィルターの役割と考えるとわかりやすいが、このシンプルな機能こそが体を健康に保つ上で非常に大切なのである。なぜならろ過機能が発揮されないと、不要物が体内にとどまりさまざまな病気に繋がる可能性があるからだ。
「沈黙の臓器」の声を聞く方法を透析専門医が解説
腎臓のケアは日頃からしっかり意識するに越したことはないのだが、「沈黙の臓器」ゆえにどうしたらいいかわからない。そこでヒントをくれるのが、本書『透析専門医が教える! 健康長寿の人が毎日やっている腎臓にいいこと』(別府浩毅/自由国民社)である。著者の別府浩毅氏は現役の透析専門医。透析とは腎臓がその機能を果たせなくなった時に人工的に機能を肩代わりする腎代替療法の一つで、現在、人工透析を行っている患者数は約34万人、さらに毎年約4万人が新たに透析を受けているとか。つまり別府氏は常に「腎臓トラブル」の最前線に立っているのだ。
腎臓は特に事前対応が大切な臓器で、診療に際してもう2~3年早く来院してもらえたらよかったのにと思う症状の人が多いと別府氏は述べる。だから本書で腎臓の役割と、腎機能が怪しくなってきた時の兆候などを知ってもらい、早い段階での治療に繋がることを願っていると言う。
下の「腎臓の病気のサイン・チェックリスト」で、あてはまるものが複数ある場合には病気のサインの可能性があるので注意が必要だ。
腎臓のケアは、誰でもできる生活習慣の見直しから
ここであらためて腎臓の機能をさらっておくと、前述の通り老廃物や不要物をろ過して尿として排泄するという基本的役割のほか、体内の水分量の調整、電解質やPHの調整、血圧の調整、造血機能などと、多用かつ非常に重要な役割を果たしているとか。この腎臓を悪くしてしまうと高血圧や貧血になったり、認知機能の低下に繋がったりする可能性も。特に腎臓に負担をかける造影剤(体内を画像検査する際に用いる検査薬)が使えないことで重大な病気の発見が遅れるなど、別の疾患の治療にも大きく影響することがあるという。実は腎臓を悪くした人の半数は糖尿病が原因だそうだが、肝心の糖尿病の治療薬の使用が限定的となるために高血糖にも低血糖にもなりやすいなどの問題も起きる可能性がある。
そうした状況を踏まえて本書が強く訴えるのは、このような腎臓トラブルに陥らないための「暮らしの知恵」ともいえる生活習慣の改善だ。基本的には食事と運動が主なポイントになるが、たとえば食事は「腎臓を守る万能食材はなく、偏りがないように食べることが大事」だったり、運動は「適度なウォーキングなど年齢を問わず体を動かすのが大事」だったりと、いずれも誰でもすぐ見直せる内容が多い。つまり知っていれば実践できるのだ。本書には具体的な食事や運動についてのほか、睡眠や入浴時などについても気を付けたいことのアドバイスが書かれているので参考になるだろう。
すでに腎臓が気になっている人はもちろん、これまで全く意識せずノーケアという人も「沈黙の臓器」の静かな声を聞くための心構えができるのは間違いない。
文=荒井理恵