SNSフォロワー数8万人超え! 世界中が驚いたコインと身近なもので作る異次元バランスオブジェ、あなたも挑戦してみる?
公開日:2024/8/3
世の中には、あっと驚くニッチな世界を突き詰めている人がいる。『絶景!コインタワーの世界』(自由国民社)の著者・たぬ氏もそのひとりだ。
たぬ氏は10年ほど前、財布に入っていた硬貨でコインタワーを制作したことを機に、硬貨を使った異次元バランスのオブジェを作るようになったとか。今やSNS(Xアカウント:@thumb_tani)のフォロワー数は8万人を超え、世界中の人が技術やアイデアに感嘆の声を上げている。そんな作品群を惜しみなく掲載したのが本書だ。
作品の制作時には物体の重心や支点に注目して調整やコントロールを行っているというたぬ氏。初級レベルから上級レベルの作品までの制作過程やアドバイスも含めて掲載されているので、自分も挑戦してみようと思うこと請け合いだ。その中から作品をいくつか紹介する。
初めての人がまず挑戦したいのは、手軽にできる「スタートライン」。
土台にした五円玉の上に五百円玉を載せ、その上に一円玉をのせるこの作品からはバランスオブジェ制作の基礎を学べる。また、インパクト大なのに難易度がそれほど高くない「シンプルねじねじ」も初心者向けの作品だろう。
この作品は、円形に並べた8枚のコインを少しずつずらして重ねていくというもの。根気が必要なため「音楽やラジオなどを聞きつつ、のんびり制作を楽しんでほしい」と著者。
こうした初級編の作品で腕を磨いたら、硬貨と身近なものを組み合わせる中級編のオブジェにチャレンジ。例えば、スプーンやビー玉を積み上げる「卓上サーカス」は、成功時に大きな達成感が得られるはず!
この作品の凄さは、ビー玉の製造過程でできる小さな傷や凸凹を利用していること。著者の着眼点に驚かされるとともに、曲面に球体をのせるという難易度の高さにチャレンジ精神が煽られるだろう。
これは著者でも26回挑戦して、ようやく成功したとか。本書内では難しいコインタワーを作る時に意識したい重心についてのコラムも掲載されているので、そちらも参考にしながら制作に取り組んでほしい。
そして上級編に掲載されている作品はさらなるインパクトがあり、中でも注目したいのは著者でさえも「二度と作りたくない」と話す「容易に想像できる最悪の展開」だ。
こちらはワイングラスの上にコインを積み、その上に少しワインを入れたグラスをのせるという衝撃的な作品。作品名の通り、失敗時にはワイングラスが割れる“最悪の展開”が予想されるので、挑戦するなら安全に気をつけながら挑んでほしい。
ちなみに、各作品の紹介ページには二次元コードが掲載されているので、制作過程、崩壊の瞬間をを動画で見ることができる。初級編では制作中の風景、中級編と上級者編では作品を壊して無に帰す様子も楽しめる。
コインタワーの魅力は、アンバランスで不可能に見える造形が安定して成り立つ不思議さにある。そう語るたぬ氏は、作品が完成すると「意味のないことに時間を使ってしまった」と虚しさも感じるそうだが、その一方で違う想いも抱くという。
でも世界はすべてが有益なことだけで成り立っているわけじゃないし、一見無駄に思えることでも積み重ねていけば、どこか遠くへ行けるのかもしれません。
「タイパ」という言葉が浸透し、いかに有益に時間を使うかを追求されがちな昨今。そんな中で、無駄とも思われる時間と労力をかけて作り上げられたコインタワーは、見る人と作る人の心に、タイパでは得られない充足感を与えてくれる。
文=古川諭香