好きな女の子のために女装生活8年! 噓を吐き続けていびつな関係を続ける中学生の思春期コメディ『女装男子はスカートを脱ぎたい!』
PR 更新日:2024/8/15
2024年7月18日、待望の第1巻が発売された『女装男子はスカートを脱ぎたい!』(しなぎれ/集英社)は、“2人”の嘘つきによる思春期悶絶コメディだ。物語は、宇一郎が男性恐怖症の幼馴染・たまちゃんのために女装して学校生活を送るという、意表を突く展開から幕を開ける。
本作の主人公・宇一郎は、心優しい性格の男子中学生。男性に対して苦手意識があるたまちゃんを守るために、女装して学校生活を送っている。「自分は女である」と嘘をついているのだ。
しかし、実はたまちゃんもまた、嘘をついている。彼女は宇一郎の秘密、つまり彼が男であることを知っているのだ。その上で彼の女装を楽しむという特殊な性癖を持っている。
さらに興味深いのは、宇一郎が女装男子であることをクラスメイトたちは受け入れているという点だ。明らかにバレバレな女装を受容している周囲と、それに対して困惑する宇一郎。この寛容な認識が、読み進める上で新たな楽しみを生み出している。
「たまちゃんを守る」という純粋な動機で女装を続け、不用意なボディタッチを避ける(実際は避けきれず悶絶する)など健全さを必死に保つ宇一郎と、その宇一郎を見て「うい吸いしてぇ」と不健全な欲望を抱くたまちゃん。この対比が物語にユーモアと深みを加えている。
さらに注目すべきは、普段は可愛いと思っている宇一郎に、ふとした瞬間男性らしさを感じて戸惑うたまちゃんの姿だ。この複雑な感情の描写が、たまちゃんの内面をより立体的に浮かび上がらせている。
また、物語を盛り上げるのは、個性豊かな癖のあるキャラクターたち。例えば、家ではオタク、外ではギャルの森さん。彼女は宇一郎のことを心の中で「ういぴ」と呼び、密かに推し活を楽しんでいる。しかし、調理実習で同じ班になったことで、彼女の隠していたオタクの顔が大爆発。本人を目の前にして、思わず宇一郎の尊さを叫んでしまう。そんな森さんにたまちゃんが共感し、2人で宇一郎へのディープすぎる愛を語り合う場面は必見だ。ちなみにこの後、森さんはたまちゃんのことを「たまぴ」と呼ぶようになり、3人は仲良くなる。森さんの登場により、宇一郎とたまちゃんの関係に徐々に変化が生まれてくるのも面白い。
第1巻では、なぜ宇一郎が女装するようになったのか、2人が出会った8年前のエピソードにも触れられている。互いに嘘をつき続ける2人だが、その背景には幼い頃に交わした「ある約束」があったのだ。この約束の内容と、それが現在の二人の行動にどう影響しているかは、物語の重要な伏線となっている。
果たして、宇一郎がスカートを脱ぐ日は訪れるのか。2人の関係はどのように変化していくのか。嘘が織りなす青春の行方を見守っていきたい。