「地獄を服にしたらそんな感じね」致命的なセンスの少年が“あかぬけ”に奮闘する人気コメディ『翼くんはあかぬけたいのに』完結!
公開日:2024/8/5
ついに完結した『翼くんはあかぬけたいのに』(小花オト/小学館)。最終巻となる14巻も発売されました。裏サンデー・マンガワンで連載されていた本作。表紙からもわかるようにまず絵がかわいい! さらにシェアハウスが舞台で、学園もの要素もあり、青春な恋愛も大人の恋愛も楽しめる。かつギャグセンスが最高! 一言では説明できない魅力が詰まったマンガなのです。
舞台は表参道に近いとあるシェアハウス。ショップ店員の姫野詩世、カリスマ美容師の兎崎隼人、カフェを経営する赤木健二という立地に負けないおしゃれな3人の大人たちが住んでいました。そこに高校入学を機に上京してきた翼くんが住むことに。初登場時の翼くんは漁師のようなサロペットを靴下にインし、毛玉だらけのニット帽を被るという言葉で説明できないほど謎の装いで登場。
そのあまりのダサさに取り乱す詩世。そこに翼くんとまったく同じ謎のピエロのTシャツを着た女の子が登場。さらなるカオスが訪れます。
ふたり目のダサっ子は恋塚桃子。翼くんと同じ長野出身、かつ同じ高校の同じクラスに通うことになる女の子です。この5人がシェアハウスで共同生活を送っていくのですが、最初はおしゃれな大人に見えた3人も全員変人であることが判明。
詩世はBL好きが高じて無機物ですらカップル妄想してしまうカプ厨。
隼人は超がつくドMでお仕置きが大好物。健二は元ビジュアル系バンドマンで、お店のメニューに厨二な名前をつけています。
つまりかなりギャグテイストの強いマンガなのですが、実は私は笑わせにこられると逆に冷めた気持ちになってしまう面倒な感覚の持ち主。しかしそんな私でも、本作は声を出して笑ってしまいます。しかも巻を追うごとにどんどん面白くなっていく……! 登場人物たちのツッコミがとにかく面白い。全員ボケもツッコミもできるので、まさかの展開の連続&語彙力高すぎるツッコミがクセになって、いつもあっというまに読み終わってしまいます。
高校生らしいエピソードも多い本作ですが、翼&桃子のクラスメイトもクセ強キャラ揃い。翼くんのことが好きな倉持愛奈(マナティー)は美人でモテるのに恋愛経験ゼロ。かなり際どい妄想を繰り広げるぶっとび感が憎めません。
雀堂京市(ジャッキー)は見た目がチャラく翼と共通点ゼロですが、実家が老舗の呉服屋で横文字がまったくわからないことから翼とズッ友に。
最新14巻ではついにマナティーの自分への恋心に気づいた翼。「マナティーのことは好きだけど、これは恋愛としての好きなのか?」と可愛らしいあるあるに悩む翼くんにキュンキュンします。そんな翼への周りの行動は相変わらずおバカアシストばかり……かと思いきや、しっかり相談に乗ってあげたり背中を押してくれる頼もしい一面も。
そうこのマンガ、笑えるだけではないのです。例えば14巻では、倦怠期に陥った友達カップルを仲直りさせようと頑張る高校生メンバーが役に立たないへっぽこ行動ばかりを繰り広げますが、最終的にカップルは「大好きな人が自分を好きになってくれること」の尊さを思いだして倦怠期を抜け出します。
またシェアハウスのメンバーがそれぞれの部屋を交換しようと荷物を移動するお話では、「次やるなら誰かが出ていくとき」という詩世の一言でちょっとしんみり。
さらに14巻には『裏バイト:逃亡禁止』(田口翔太郎/小学館)とのコラボマンガ(しっかり怖いです)も掲載されるなど、恋愛、感動、ホラーまで振れ幅が大きく飽きのこない構成となっているのです。
果たして翼くんはあかぬけられるのか? それはもちろん読んでからのお楽しみですが、個人的には読み終わって、「このマンガを読んできてよかった!」と思いました。
さらに、小花オト氏の新連載『BFF(ビーエフエフ)』が2024年8月17日(土)よりスタートします!
マンガワン、裏サンデーにて隔週更新されるとのことで、翼くんファンはもちろん、気になる人はぜひチェックしてみてください!
文=原智香