「お腹が急にぎゅるぎゅる」ストレスだけが原因ではない!? 医師が解説、「過敏性腸症候群(IBS)」の4つの原因
公開日:2024/8/3
お腹の痛みをともないながら、急な下痢をもよおしたり、便秘が続いたりしてしまう過敏性腸症候群(IBS)。一度は耳にしたことがあるが、正確な病状や原因などはわからないまま、ただなんとなく「よくならない」、そして「よくわからない」怖い病気というイメージを持っている方が多いのではないだろうか。
『過敏性腸症候群(IBS) くり返す腹痛・下痢・便秘から脱出するには』(水上健/講談社)は、過敏性腸症候群について、なぜ起きるのか、病院での検査・診察内容、そしてどう治すかまで、幅広く解説してくれる1冊。
──IBSにはまったく異なる四つの「原因」となる体質があります。「よくならない」のは、その原因が「よくわからない」ままIBSという「病名」に対して画一的な治療がおこなわれるからです──
著者で、国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長の医学博士・水上健氏は本書の「まえがき」でこう記している。過敏性腸症候群が、いったいどんな病気で、どんな原因・体質で起き、どんな治療法があるのか? 本書の一部を紹介していきたいと思う。
過敏性腸症候群の原因はストレスだけじゃない!?
腹痛をともなう下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群。この病名を聞くと、ストレスに過敏な人がなる病気だと思いやすいが、実はそれは間違いだという。
本書によると、過敏性腸症候群の原因は次の4つ。
●ストレス型
●腸管形態型
●胆汁性下痢型
●消化不良型
これらの原因とは別に病型を基準に、過敏性腸症候群は下痢型と便秘型、混合型、分類不能の4つにわかれるが、ストレスが原因の過敏性腸症候群は、下痢型の約50%、便秘型の約20%を占めるという(久里浜医療センター受診患者)。過敏性腸症候群というと、「ストレスの病気、メンタルの病気」だと思いやすいのは、この型の人が多いことに原因があるという。
では、ほかの3つの型は、いったいどのようなものなのだろうか。ごく簡単に説明すると、腸管形態型は「ねじれ腸」や「落下腸」など、腸の形に問題がある人が運動不足になって発症するケース。胆汁性下痢型は、体内下剤といえる胆汁酸が必要以上に多く分泌されて大腸まで届き、食事をするたびに、その食事の内容とは関係なくかならず下痢をしてしまうケース。そして消化不良型は、脂質やFODMAP(フォドマップ/発酵性糖質)が原因となり、消化不良で下痢を起こすタイプだという。
ポイントになるのは、次の点だ。
――これら四つの「原因」はかぶることがありますが、それぞれの解決は難しくありません。ただ、いずれも体質ですので、一生無理なくつきあう方法を知り、実践する必要があります――(まえがきより)
4つの原因ごとに異なる過敏性腸症候群の治療法
過敏性腸症候群は、原因が何かをつきとめれば治せる病気だというが、4つの原因それぞれにその治療法や薬は違ってくるという。
例えばストレス型の方の場合、日常生活で経験するストレスによって腸が動いてしまい、腹痛と下痢、まれに便秘をともなう腹痛を起こすという。これを治そうと真剣に考えれば考えるほど、それがストレスになり、さらに病状が悪化するという悪循環を生んでしまうことも。そんなときは、薬物療法と並行して、「体質だから仕方がない」と考えすぎないこと。また、流すように受け入れられる認知療法やカウンセリング、運動やマインドフルネスも効果的だという。
そして、ねじれ腸や落下腸など、大腸の形に問題がある腸管形態型の場合、運動や腹部マッサージ、胆汁性下痢型の場合、朝食後の排便習慣、プラス薬物療法、消化不良型の場合、食事制限と薬物療法が効果的なことが紹介されている。
それぞれの原因に対する治療法の詳細は本書に譲るが、本書ではそれ以外にも、過敏性腸症候群に使用する薬の一覧や日常生活のなかでの薬の飲み方、お腹をよい状態に保つための生活習慣や食事、ストレス対処法、マッサージなど、幅広い情報が解説されている。
日本人の10%程度は過敏性腸症候群であるといわれるいま、この病気は我々が思っている以上に身近なものだといえそうだ。電車に乗ると各駅で下車してトイレに走りこまなければならない、試験や会議ではかならず中座しなければならない、などの重い症状ではなくても、過敏性腸症候群が日常生活に及ぼす影響は大きい。そんな事態を避けるために、本書で過敏性腸症候群の正しい知識を身につけてはいかがだろうか。
文=井上淳
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