前代未聞の“シカマンガ”爆誕!TVアニメが大バズり中『しかのこのこのここしたんたん』の原作コミックをレビュー

マンガ

更新日:2024/8/23

しかのこのこのここしたんたん
しかのこのこのここしたんたん』(おしおしお/講談社)

 2024年7月開始のTVアニメは話題作が目白押しだ。そんななかで放映前からネット上で大きな話題になっていた作品がある。それが『しかのこのこのここしたんたん』である。

 5月28日にTikTokでオープニング曲のイントロ部分「しかのこのこのここしたんたん」という歌詞とメロディに合わせてキャラクターが踊る動画が公開されると、6月21日には1,000万回再生を突破(放映開始後の7/15時点では1,600万回再生、100万いいねを超えた)したと発表され、大きな盛り上がりをみせていた。そしていよいよTVアニメ第1話が放送されると、2話の放送前にはオープニング映像もYouTubeで1000万回再生を記録したのだ。

 この夏SNSで注目を集める、その勢いが天井知らずな“シカアニメ”。いったいどんなストーリーなのか、その魅力とは? 原作コミック『しかのこのこのここしたんたん』(おしおしお/講談社)を紹介していく。

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■少女は一人のシカに出会う!ガール・ミーツ・シカ物語開幕!

 物語は頭に角を生やしたシカ娘と、元ヤンキーの清楚な女子高校生が出会うところから始まる。ここで「は?」となる人も多いかもしれないが、まずは細かいことは気にせずついてきてほしい。

 都立日野南高校に通う虎視虎子(こしたん)は、ある朝の登校中に冷たいものが顔に当たった。それは少女の鼻水であった。彼女は電線に引っかかって空高くで身動きが取れなくなっており、犬に吠えられハトたちにつつかれていた。そんな少女の頭には立派な鹿のツノが生えていた。

 あまりにツッコミどころが多い現実離れした状況。理解できなくなったこしたんは、見なかったことにしようとする。しかし空の少女から「あのとき助けていれば…って一生後悔するかもよ」と圧をかけられ、結局助け出した。だが関わったのが運のつき。彼女こそが、こしたんの人生をかき乱す元凶となる鹿乃子のこ(のこたん)だった。

 同じ日、のこたんはこしたんのクラスに転校してきた。ツノも隠さず、自分はシカだと公言してはばからない。何事も無かったかのようにシカ娘を受け入れている周囲をよそに、こしたんは困惑・混乱しまくりながらも、ツッコミを入れまくる。そんな彼女はいつしか、のこたんのお世話係となり「シカ部」に入部するのだった。ボーイ・ミーツ・ガールならぬ「ガール・ミーツ・シカ」な物語。自分のことを“のこたん”と呼ぶ彼女のペースで世界は回りだした。のこたんに出会って高校生活が一変したこしたんの運命やいかに――。

■シカ娘と仲間たちはいったいどこへ転がる……?

 シカ娘・のこたんを中心にしたカオスな世界には、彼女と張り合えるくらいクセが強く、情報量の多いキャラクターたちが次々と登場してくる。

 本作唯一のツッコミキャラクターであるこしたんは清楚な優等生として通っているが、中学生時代は不良でこれを隠していた。元ヤンであることをのこたんに見抜かれ、秘密にする条件で彼女に付き合うように。

 彼女の妹が虎視餡子(こし あんこ)。普段は常識人なのだが、こしたんが絡むと姉へのシスターコンプレックスにより暴走を始める。「姉を独占している」と思い込み、のこたん憎しで戦いを挑んでくるシスコンヤンデレ美少女だ。

 立派なシカを目指している後輩・馬車芽めめ(ばしゃめ めめ)。のこたんに憧れて弟子入りするようにシカ部員になる。一方、大好きな米のため校内に田んぼをつくり、田植え作業を最優先する食いしん坊少女である。

 さらには、シカ部を敵視する勢力も続々と登場。個性的なキャラ同士の掛け合いだけで笑ってしまうが、物語がどこへ向かうか、どこへ転がっていくのかは6巻時点でもまだ見えていない(どこにも向かわないかもしれないが)。読み始めて「はっ」と我に返る。気がつけばもう6巻という感じなのだ。

 こんな風に書いておいて何だが、単行本6巻までで複雑な要素はほぼ無く、肩の力を抜き、頭を空っぽにして読める美少女コメディなので気軽に読んでみてほしい。

 この夏、もっとも変なアニメ、おかしいアニメとしてSNS上でバズっている本作は、原作を読む限り、2話はまだまだ序の口であると言っておきたい。本稿のライターは、シカ娘を中心にしたハイテンションでぶっとんだ展開に「ついていけるのか」と不安だったが、今は完全にハマッている。アニメを楽しく見ている人なら間違いなくオススメできるし、美少女コメディが好きな方にもオススメの原作コミックだ。ぜひ深く考えず、シカ娘の世界に足を踏み入れてほしい。繰り返すがあまり考えすぎないのが楽しむポイントだ。

文=古林恭

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