「メガネを必死に探していた」に隠された2つの意味とは!? 親子で楽しめる、新感覚短編集。謎解き感覚なのに日本語の勉強にも!
PR 公開日:2024/8/6
日本語って本当に難しい。大人になっても上手く使いこなせないことがある。たとえば、先日、夫に「隠し子疑惑」が持ち上がった。夫が口にしたのは「俺と太郎さんの子も走るのが好きで……」という台詞。私は存在の知らぬ「俺と太郎さんの子」なる人物の話題に、一瞬動揺してしまったが、夫が言いたかったのは、「俺」も「太郎さんの子」も2人とも走るのが好きだということらしい。——「もう! なんて紛らわしいんだ!」と大笑い。1つの文章で2つの意味に取れるだなんておかしい。だけれども、我が子つまり「私と夫の子」には、誤解のない日本語を使いこなせるようになってほしいと切に思うのである。
しかし、どうすればいいのだろう。伝えたいのは、「自分が思っていることを相手に伝えようとしても、表現の仕方によっては、違う意味に取れてしまうことがあるんだよ」ということだけど、言葉にするとやたら堅苦しい。どうせなら日本語の難しさも面白さも同時に伝えたいのだけれど……。そんな時に手に取ったのが、『2つの意味の物語 アイドルの妹は高校生』(ささきかつお/新星出版社)。この本は、1つの文章で2つの意味に取れる「二義文」をテーマとした新感覚の短編小説集。シリーズ第二弾となる本書では、230を超える応募から選ばれた5つのオリジナル二義文を含む45作品が掲載されている。
たとえば、これは、読者からの応募された二義文だそうだが、「教室に問題はないからね」という文章から、あなたはどのようなストーリーを想像するだろうか。「教室に問題用紙は置いておらず、他の場所にある」「工事の音がうるさいなど、教室自体に問題になるようなことはない」という2つの意味を読み取ることができたならば大正解! 「問題」という言葉が読み方によっては全く別の意味になるのだから不思議だ。この本では、まず見開きで物語が描かれ、末尾に書かれた1つの文章、二義文をキッカケに、次ページでは全く違う2つのストーリーが展開されていく。1作品4ページで完結するから、テンポよく読み進められるし、朝読などのスキマ時間に最適。また、イラストも分かりやすいから、普段本を読まない子でも楽しめそうだ。しかも、ストーリーはバラエティ豊か。ハッピーなストーリーから、ちょっぴり切ないストーリー、さらにはゾクッとさせられるストーリーまである。
児童書とはいえ、大人が読んでもクセになる。文章を見ただけで、パッと2つの意味を思い浮かべることができるものもあれば、「これは1つの意味しか思いつかないけど、他にどんな風に読み取れるんだろう」と考えさせられるものも。たとえば、私は、これまた読者応募から生まれたという「メガネを必死にさがしていた」という文章に悩まされてしまったし、タイトルにもなっている「アイドルの妹は高校生」という文章も、1つの意味しか思いつかなかった。まるで謎解き感覚。「どんな話になるんだろう」と想像しながらページをめくれば、「なるほど!」とスッキリ納得。日本語って難しい。けれども、こんなにも面白い。「誤解されないように、1つの意味にするには、どういう表現にすれば良いのだろう」ということまで考えながら、親子で読み進められるのがいい。
ただ楽しいだけでなく、日本語の勉強にもなる。児童書だけど、子どもだけでなく大人にとっても頭の体操にもってこい。日本語の奥深さを感じさせてくれるこの短編集を、この夏、あなたのご家庭でも、家族みんなで一緒に読んでみては?
文=アサトーミナミ
◆新星出版社のライフマガジン『Fun-life!』
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