天気の悪い日/絶望ライン工 独身獄中記㉔
公開日:2024/8/7
![絶望ライン工 独身獄中記]( https://develop.ddnavi.com/uploads/2024/08/0feadcd108d2bbd920aa8105c806914f.jpg)
金曜の夜にビールを飲みながらこれを書いている。
冒頭でいきなり虚偽申告をかましちまった。すいません、飲んでいるのは発泡酒です。
ショウガの酢漬けをバリバリと齧りながら飲む。最高である。
原稿は一向に進む気配がない。
それでも明日からの2連休を想えば心が弾む。素晴らしい夜だ。
終末の転帰、いや週末の天気を調ぶれば雨と出る。
天気の悪い休日ほど素晴らしいものはない。明日が来るのが実に楽しみだ。
愉快なこの夜が永く続くように、冷蔵庫に3本目を取りに行く。
独身獄中者の天敵、それは何の予定もない休日である。
基本的に我々には何も予定がない。
デートも飲み会も合コンもショッピングもランチもブランチもアバランチもアブニマーチもODアムネジアも何もない。
或るのは永遠にも思える閑暇と、マスターレート1200で成長が止まった私のリュウである。集中!
予定は自ら作るほかない。
カレーを食べに行く、焼き鳥屋に飲みに行く、パチンコを打ちに行く、馬が走るやつを見に行く、小舟が廻るやつ、自転車のやつ、バイクのやつ。イーティーシーカードが挿入されていません。
では自分は本当にカレーを食べに池袋まで行きたいのか、競艇をやりに平和島に行きたいのか。
答えはノー、ナット・エヴァーである。
全然行きたくねえの。家でゴロゴロしたいです。
でもお天道様が許しちゃあ呉れねえ、天気が良いなら外へ出ろ。
雲一つないカラっと晴れた休日に、家に居座るは重罪、敵前逃亡と見なされ銃殺である。
そんな罪悪感にも似た贖罪の苦しみから解放されるのが、天気の悪い休日の朝です。
そういえばこの連載は一部の読者に大ウケ、大好評ですと担当編集より聞いているが、本当にそうなのか。
騙され、乗せられているだけではないのか。
私の口語と文語が混ざった汚ねえ文章には連載開始当初から多くの苦情が寄せられている。
統一感がなく、読みにくい。教養のない下品な文章だ。
そんなご意見にこの場借りて表明したい。
我思うに先ズ言葉ってゆーのはァ、ず~~ぅと進化してるて思うンす。
若者の言葉遣いが悪い。おかしな日本語になっている。言葉の乱れが嘆かわしい。
古くからの遣い手がそうおっしゃるのも理解るが、500年前からすれば今の日本語も相当酷いモノだらう。
私は時代とともに移り変わる言葉の変化を「日本語の進化・発展」として楽しんでいます。
毎年楽しい語感の日本語が若者を中心に流行り出すのが面白くて仕方ない。
古くさい武家言葉の心地よい余韻も好きだし、新しい日本語の何度も口にしたくなるような楽しさも好きだ。
意味を知らなくとも楽しめるよう、そして若い方にも気軽に読んで欲しいという思いから、可能な限りくだけた文体を敢えて使用しております。
チト読みにくいかもだけんじょも、言葉のリズムを楽しめるようチルい文章書いてるつもりなんだワ…それおやめろとかぃゎれたらぴえん通りこしてジャオォォォン
朝起きて天気が悪ければ色々と諦めがつく。
外出する必要はない、好きなだけ6畳の部屋に居て良いのだ。
住処とする座敷牢の畳は同居する野生動物の掘削労働により酷い有様で、ここに無遠慮に転がるのがたまらなく好きである。
テレビもつけず森閑とした部屋であるが、窓に当たる雨音が心地よい。
通りを行く軽トラがサーっと、水音を引いて走るのが聞こえる。
我ながら、さっきまでジャオォォォンとか言っていた人間が書いているとは思えない文章である。
この感じこそが、自分が思う日本語の面白さってわけ。
ところで私は雨が降るとラーメン屋に行きたくなる。
いつも混む人気店も雨の日ばかりは並びが少なく、すぐに食べることができるからだ。
明日は美味しいラーメンを食べに、久々に桜新町へ行ってみるか。
蒲田のずっと先、東神奈川まで出るのも悪くない。
なんてったって土日、何もすることがなくずうっと暇なのだから──
もちろん虚偽申告である。
<第25回に続く>![](https://placehold.jp/300x250.png?text=div-gpt-ad-dvn_3r)
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41歳独身男性。工場勤務をしながら日々の有様を配信する。柴犬と暮らす。