「男がすることじゃない」は過去の価値観? シングルファーザー3人を描くマンガ『Daddy Steady Go!』
PR 更新日:2024/9/20
当たり前のことだが、自分という人間の性質は一朝一夕で出来上がるものではなく、生きてきた長い年月の中で形成されたものだ。だからこそ、歳を重ねれば重ねるほど変わるのは難しい。でも、それでも、人は変わる努力をすることで輝き続けるのかもしれない。
2024年8月22日、そんなふうに、思わず自分自身の大人の成長について考えてしまう、『Daddy Steady Go!』(シマ・シンヤ/講談社)というコミックが発売された。本作品は、講談社の「モーニング・ツー」で連載されていた漫画作品。
本作品の主な登場人物は、高校からの友人であるジョー・カラニ・ブレイク(38)、ハヴィエル・アルバ(39)、ジェイク・チョウ(38)の3人のシングルファーザーと、その子供たち。ジョーは自身の父親の影響で、「男は料理しないんだよ」など古い考えを捨てきれずにいたが、あるとき息子のタイラーに「18世紀の人なの?」「ミゲルのパパが朝ごはん作ってくれた」と言われてしまう。ちなみにミゲルは、タイラーの友人でハヴィエルの息子だ。
ジョーは、一度は「うちはうち よそはよそ」と話を打ち切ったものの、気になってハヴィエルとジェイクに相談。結果、料理を学ぶことを決意する。そして最初こそ自分の中にある「男らしさ」が料理を拒絶していたが、次第に料理を受け入れ、むしろハマっていく。ジョーが朝ごはんにパンケーキを焼くと、タイラーも「パパ シリアルじゃないの?」と大喜び。親子間の温度が高まる結果となった。
また、第2話では、ジェイクの娘であるアリスのダンス発表会が近づく中、業者のミスで衣装不足が発覚。ジェイクがジョーとハヴィエルに打ち明けると、ハヴィエルが「つまり 縫うしかないんじゃね?」と一言。3人で、自分のブランドを立ち上げ経営しているエイヴォン・レディックという男のもとへ赴き、彼と協力して衣装作りに挑むこととなる。プロであるエイヴォンはともかく、3人には当然裁縫スキルなんてない。だが、発表会を成功させるために協力し、必死で衣装を作り上げ、無事発表会へ間に合わせたのだった。
最初は料理ひとつするのにも「男がすることじゃない」と拒絶していたジョーだが、こうして仲間たちとともに少しずつ「父親」へと成長していく。筆者は女性なので男性がどう感じるかは分からないが、仲間とともに悩みながらも大切なものを守ろうとする姿は、自らの父親由来の「男らしさ」に囚われていたジョーより何倍もかっこいいと感じた。
本作品に登場する男性、特にジョーはいかついビジュアルで、家事や育児などとは縁遠い存在に見える。そんな彼らが「変わろう」とチャレンジしているからこそ見せる真剣な表情、不器用さ、常識を覆されたときに見せる驚きや葛藤の表情が何とも絶妙で、普段とのギャップがとても可愛く思えてくる。これはずるい……!
誰でも何でも「最初」はあるわけで、そこで一歩踏み出すか否かでその後の人生が大きく変わっていく。もちろん芯を大事に貫くことも大事だが、筆者も変わるべきところは変える努力をしていきたいと改めて感じた。これからも、ジョーをはじめとした3人は男として、父親として成長していくのだろう。筆者も彼らに負けていられない。
文=月乃雫