フィンランドで相槌は不要?週末北欧部・chikaさんが北欧での“くらしのレッスン”を綴った実録コミックエッセイ
PR 公開日:2024/8/9
豊かな自然の中で暮らすことに憧れる人間にとって、フィンランドのような北欧での暮らしはとても魅力的に映る。以前、フィンランドには誰もが自由にきのこやベリーを採ることができる「自然享受権」というものが存在すると聞いて、なんて素敵な国なんだろうと憧れが強まった。だが、実際に行くとなると当然ハードルが高い。でも、もっと知りたいし感じたい!
そんな筆者のような人でもフィンランドでの暮らしや文化を堪能できる、『フィンランド くらしのレッスン』(週末北欧部chika/集英社)という本がある。著者である「週末北欧部chika」さんは、2009年にフィンランドへ行った際その魅力に一目惚れしたそう。そして「私…ここに住みたい!」と夢を追い続け、2022年に寿司職人として単身でのフィンランド移住を果たした北欧好きだ。行動力がすごい…!
移住して4ヶ月が経ったころ、無事銀行口座を開設し、アパートでの一人暮らしが始まった。しかし長らく憧れてはいたものの、いざ住んでみると分からないことだらけ。その中でも印象的なのが“パーソナルスペースを含む距離感を尊重する”というもの。例えば、日本人同士で話していると相槌が大事になるが、フィンランド人はほとんど相槌を打たないという。
聞いているのか、それでいいのか不安にならないのかと不思議だが、「何か話したいのかと思って待っちゃう」「ジャマされている気持ちになって集中できない」と言われてしまったそうだ。文化の違いで、こうも感じ方が変わってくるのかと驚く。
また、この距離感を尊重する考え方は、フィンランドの言葉にも影響を与えている。フィンランドには、孤独を表す言葉が2種類あり、積極的な孤独を「ソリチュード」、消極的な孤独を「ロンリネス」というらしい。chikaさんが「今週末は何をするの?」と聞いたのに対し、フィンランド人が「今週末はソリチュードを楽しもうと思う」と何でもないことのように答える様子がとても印象に残った。ソロ活好きな筆者としては、この文化が日本にももっと浸透してほしいと心から思う。
ただその分、してほしいことはしてほしいと言う必要があり、向こうが察してくれる、先回りして動いてくれることはほとんどない、という一面も。chikaさんも、最初はそんなにガンガンはっきり伝えていいの!?と困惑したそう。良くも悪くも、本当に徹底して「距離感」が大事にされているようだ。このほかにも、フィンランド人の自分やプライベートを大事にする考え方、程よく距離を置きつつも相手を尊重する生き方をあちこちで垣間見ることができる。
距離がありつつも、決して他人に対して冷たいわけではなく、情報の共有などは積極的に行われる。なんて理想的で羨ましい世界なのだろう。本書を読んで、一層フィンランドへの憧れが強くなった。日本人も、もっと自由に生きてよいのでは…? また、独特のタッチで描かれる、ゆる可愛いイラストもフィンランドの空気と絶妙にマッチしているように思えた。
他人と距離を取って自分のペースを確保できるからこそ、相手のことも尊重して優しくなれる。筆者も少しずつでも理想の生き方、理想の人との距離感を見つけ、そうした付き合い方を目指していきたい。
文=月乃雫