『善良な不良高校生の日常 1』（立葵/スクウェア・エニックス）は、超ワルの不良……かと思いきや、むしろ超いい子な高校生たちが繰り広げる、日常系コメディ漫画だ。

　不良が多いとウワサの吉井戸（よしいと）高校に転校してきた吉田花太は、これまで家庭の事情で引っ越しが多かったこともあり、友達があまりできないタイプの、いわゆる陰キャの高校生だ。

　そんな吉田くんが転校初日、不安と緊張の中、校内を歩いていると、銀髪にピアスというヤンチャ系の生徒が、カツアゲをしている現場に遭遇してしまう。しかしそれは迷い犬のチワワを保護しているだけだった――!?（ピアスも校則違反なので実はイヤリングだった……!!）

　一方では胸倉（むなぐら）を掴み合い、ケンカをしている生徒たち！

　しかしケンカの理由は、汚してしまった制服のクリーニング代を相手が受け取ってくれないから……という理由だったり――!?

　そう、この学園の不良（？）であるチワワを助けた森くん、ケンカをしていたイケメンの河合くんと坊主の谷倉くんは、見た目や言動は不良に見えるのに、実は善良な高校生。

　校則を守り、友達を大切にし、街に出れば自然に人助けをする。「平和」を体現しているような、超いい子たちなのである。

　本作は、そんな森くん、河合くん、谷倉くんのギャップが光る日常を楽しむ物語なのだが、この三人の「性格のギャップ」も魅力溢れるのでご紹介したい。

　森くんは、見た目が派手で、少し近寄り難い雰囲気ではあるものの、実際は「おかん系」男子。ウェットティッシュやソーイングセットを常時携帯している。ちょっとおバカな河合くんや谷倉くんにツッコミを入れる常識人でもある。

　クール＆頭脳派イケメンに見える河合くん。しかし、彼の精神年齢は小学生で止まっている。一方で、困っている人を助けて「いいことあった！！」とキラキラした目で喜んじゃうような、「人の喜びを自分事に感じられる」純粋ないい子でもある。

　谷倉くんは、不良に憧れているのかワルを気取るも、どこかズレている「エセワル」。根はいいやつで先生からの信頼も厚い。友達や妹を想う熱い一面もある。

　……と、本作はこんなギャップのある三人が、善良な言動で周囲の人たちをハッピーにさせていく物語がいっぱい詰まっている。

　もちろん、読者もハッピーな気分になれるので、勉強や仕事で疲れて帰宅した後、お菓子でも食べながら読んでみてほしい。

　キャラクターたちの善良さにほっこりして、そのギャップに笑って、「人は見た目じゃないんだな。世の中、悪い人ばっかじゃないよな」と、なんだかハッピーな気分で眠れるのではないだろうか。

　そんな癒し効果がある彼らの日常を、ぜひチェックしてみてほしい。

文＝雨野裾