宇宙人発見に向け進む観測と膨らむ期待! そもそも宇宙における「生命」の定義とは?/宇宙はなぜ面白いのか③

暮らし

公開日:2024/8/18

宇宙はなぜ面白いのか』(北川智子/ポプラ社)第3回【全4回】

 数キログラムの超小型衛星や日本人宇宙飛行士が月面に降り立つ予定のアルテミス計画など、目覚ましいスピードで進んでいる宇宙開発。そこに異業種から飛び込んだ著者が、宇宙の成り立ちからロケットの仕組み、惑星探査の最前線まで、宇宙について今知っておくべき基本をわかりやすく綴った「挫折しない宇宙の入門書」です。宇宙飛行士・山崎直子氏、宇宙探査エンジニア・小野雅裕氏も推薦する『宇宙はなぜ面白いのか』から、わかりやすくて面白い宇宙についての解説を抜粋してお届けします!

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宇宙はなぜ面白いのか
『宇宙はなぜ面白いのか』
(北川智子/ポプラ社)

地球外生命がいるかもしれない惑星

 2024年3月に英国ケンブリッジ大学から、地球外生命体の可能性を示唆するデータが発表されました。半径が地球の2倍ある、73光年も離れたところにある系外惑星に、蒸気、メタン、二酸化炭素を大気に含んでいるものがあるというデータが出たのです。

 表面の温度が高ければ、水ではなく蒸気としてしか存在しないのではないか、という指摘もなされてはいます。もちろん、そのような惑星に生命が存在できるかどうかはまた別問題でもあります。でも、水がある惑星には地球外生命がいるかもしれないという、いわゆる宇宙人発見への期待が大きくなっていくのです。

UFOは地球に来たことがあるのか

 地球外生命体を探しに行くのではなく、地球にやってくるアレがあるのではないかと思う方がいらっしゃるかもしれません。アレというのは、そう、未確認飛行物体(UFO)です。

 アメリカでは、政府主導でUFOに関する研究を隠してきたのではないかとの物議があり、2022年に米国防総省の内部組織「全領域異常対策室(AARO:All-domain Anomaly Resolution Office)」が、機密文書全てにアクセスして調査することが決まりました。2024年3月、AAROのレポートでは、政府は何も隠していない、という結論が出されています。

何をもって「生命」と言うのか

 アポロ計画で月面着陸が行われるようになった当初、月から戻ってきた宇宙飛行士たちが隔離されたことがあります。地球外での環境には人類がまだ知らない何か、たとえばウイルスのような目に見えない大きさのものや胞子のように植物に育つものがあるかもしれないからです。宇宙人さえもいないとは言い切れないのですから、検疫は地球の生物、環境にとっては重要です。

 無人探査から持ち帰られたサンプルにしても、宇宙飛行士が持ち帰った石にしても、あるいは宇宙飛行士たちにしても、もしかすると地球にない何かが付いているかもしれない。場合によっては、それが人類の健康を害したり、地球を破壊するかもしれないという可能性も想定してのことです。ウイルスや細菌など、感染源になるものが持ち込まれるのをどうにかして防がなくてはなりません。

宇宙はなぜ面白いのか

 こうしたことを考える時、何をもって生命と言うべきか、という点が議論になります。端的にいえば、ウイルスも宇宙人なのか?という点をどう考えるかということです。

 NASAは「生命とはダーウィン的進化を行うことが可能な、自己を維持できる化学システムを持ったもの(Life is a self-sustaining chemical system capable of Darwinian evolution)」と定義しており、この場合ウイルスは除外されます。ウイルスは生物の細胞に入り、その中で細胞のつくりや機能に頼りながら増殖していきます。ですから、自己を維持できる化学システムは持ち合わせていません。

 生命かどうかのひとつの基準は、細胞があるかどうか、と考えるのはどうでしょう。現時点では、多くの場合、細胞という膜構造をもつ単位から成り立っているかいないか、自己複製ができるかできないかで線引きをしています。

生命を探す時、炭素がひとつの決め手となる

 生命かどうかの基準で考えると、「宇宙人」は、自己を維持できる化学システムを持っているものということになります。ということは、炭水化物、タンパク質、脂肪など、生物の体内で作り出されるもの、つまり、有機物を見つけると、何らかの証拠を摑むことができるかもしれません。これを「有機生命体探査」と呼ぶのですが、生物が体内で作りだす有機物は、そもそも植物が光合成をして作り出した物質が元になっているため、二酸化炭素の構成元素である炭素(C)がひとつの決め手となりうる、と考えられるのです。

 また、生物はある星から別の星に運ばれる可能性もあるため、必ずしもその星で生まれるものとは限らないとする説もあります。さきほどのリュウグウのサンプルが示すように、何らかの形で地球に生命が持ち込まれたという説です。

 その根拠として、現に隕石として宇宙から地球に飛来するものを解析すると有機物が含まれていることがわかっています。どこか遠くから、生命の元になる構造が運ばれてきたのではないかという説も含めて、研究が進められているのです。

 いるのか、いないのか。いるならば、どんな姿をしているのか。ワクワクする気持ちがつまった「宇宙人」という言葉。

 現在は、宇宙人はいるものではなく、過去に「いた」のかもしれない、という説も出てきています。

<第4回に続く>

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