シンデレラの義理姉なのに、王子とシンデレラと三角関係…童話と異なる世界への転生、どんな未来になる?
PR 公開日:2024/8/9
『シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています』(月永遠子/白泉社)は、誰もが知るシンデレラの物語を斬新な視点で描いた作品だ。
物語は、主人公がシンデレラの義理姉・アトラに転生したところから始まる。本作では、転生前の記憶を持つアトラが、シンデレラの脇役に徹し、妹を優しく守り支える存在として描かれている点が特徴的だ。しかし、周囲の人々は物語通りに補正されているのかアトラを悪役だと決めつけ、理不尽な扱いをする。
1巻で明かされた核心は、「シンデレラは実は敵国の王子で、母親の魔法で女性に変身し国外逃亡していた」という衝撃の事実だ。アトラとの出会いで声を取り戻し、彼女を唯一無二の存在と思うようになる。
舞踏会の夜、城への襲撃が発生。シンデレラがジークヴァルト王子殺害を企んでいると知ったアトラは、前世の戦争経験から平和の尊さを知っており、ジークヴァルトを守るため騎士団入りを決意する。
2巻では、アトラがジークヴァルトを庇って怪我を負ったため、傷が癒えるまでアトラはジークヴァルト専属のメイドに指名された。このことが、二人の関係に大きな転機をもたらすこととなる。危険な騎士団への復帰を望むアトラが、「守られる側より守る側でいたい」と言うのを聞き、ジークヴァルトもまた「守られるより守る側でいたいよ アトラと一緒だ」と、新たな決意と共にアトラへの想いを益々募らせるのだった。
アトラとジークヴァルトは次第に絆を深めるが、同時にシンデレラの心に暗い影を落とす。アトラを独占したいシンデレラは、二人の距離が縮まるにつれジークヴァルトへの殺意を強めていく。今すぐにでも戦争が起こりそうな状況で、秘めた殺意もひしめき、暗いストーリーになりそうだが、アトラの鈍さとアトラを思うジークヴァルトの真っ直ぐな恋心がそうはさせない。
ジークヴァルトのアトラへの恋心を知っているシンデレラは、ジークヴァルトへの殺意をひた隠しにしながらも、次第に殺意を隠せなくなっていく。しかし、シンデレラの正体を知らないジークヴァルトはシンデレラへの警戒もなく危うい橋を渡ってしまうのだった。この三者の関係が、読者の心を掴んで離さない。
伝統的なシンデレラストーリーの構図を覆しながらも、悪役のはずだった義理姉が溺愛される主人公となり、二人の王子に愛されるという斬新な設定だが、アトラ自身は二人の恋心に全くといっていいほど気づいていない。鈍いアトラが王子に愛され、どう変わっていくのかも見物だ。
アトラは自身が抱えるトラウマと、物語のセオリー的には悪役でいなければいけないという自らにかけた呪いを乗り越え、運命を切り開いていくことができるのだろうか。愛と戦いが交錯する世界で、キャラクターたちの内面の葛藤や隠された想いが深く描かれ、物語の展開に一層の期待を抱かせる。アトラは転生後の世界でどのような未来を掴むのか、ぜひ本編で確かめてほしい。