安部若菜 エッセイ連載「私の居場所は文字の中」/第1回「本当の"居場所"」

文芸・カルチャー

公開日:2024/8/16

私の居場所は文字の中

突然ですが、こんな風に思ったことはありますか?
「私の居場所はここじゃない」

突然すみません。初めまして、NMB48の安部若菜です。普段は大阪の難波でアイドル活動をしています。読書が大好きで、人生でいちばんの幸せは「のんびりと本を読むこと」そんな本好きが高じて小説を書いており、12月6日に2作目の小説を発売いたします!

そのタイトルは、『私の居場所はここじゃない』
ここで冒頭の質問に戻りますが、皆さんはそう思った経験はありますか?

私は、何度もあります。
もしかしたら今でも、心の片隅にはそんな思いがいるかもしれません。
本当の”居場所”って何だろう?

そうやって1人で自問自答するのが好きで、それをノートに書き出すのも大好きだったので、自然と小説が書きたい!と思うようになり2022年に処女作『アイドル失格』を出版させて頂きました。

それから有難いことに『アイドル失格』の漫画化・ドラマ化を経て、今年の12月6日、2作目の小説『私の居場所はここじゃない』を発売いたします!
今作は高校生男女5人が、理想と見えてくる現実の間で悩みながらも、必死に夢を追う物語です。友人関係や嫉妬、なりたい自分となれる自分。高校生の青臭さや瑞々しさが、ぎゅっと詰まった1冊です!

何にでもなれて、何にもなれない。
そんな期待と不安を併せ持った高校時代の曖昧さを描きました。

 

そして自分の高校時代も振り返りながら執筆していると、何度も「大人って何だろう?」と考えさせられました。
私は今年23歳になりましたが、気持ちはあまり高校生の頃と変わりません。

まだ10代の気分だし、いつか億万長者にもなれる気がするし、両親には反抗的な態度を取ってしまいます。
一方で徹夜が出来なくなったり、揚げ物があまり食べられなくなったり、賑やかな旅行先よりもゆっくりと温泉に行きたいと思うようになったり体だけは確実に大人になっていっています。

大人になるってなんなのか。
もし何にでもなれる訳ではない自分自身を受け入れることが大人になることなのだとしたら、私はまだまだ子供のままです。
でも23歳らしく現実もある程度分かってきて、自分の力量も理解しているつもりです。

なりたい自分と、なれる自分。”大人”になるにつれて見えてくる現実。
そういったものは、何歳になっても付きまとうものなのでしょうか。

 

そして小説出版に際して執筆などのお話をこちらで連載をさせて頂くことになりました。
『私の居場所はここじゃない』そしてこの連載も誰かの束の間の息抜きとなるような居場所になれば嬉しいです。よろしくお願いいたします!

 

安部若菜の最近読んだ本

ここからは、好きな本を誰かと共有したいという思いから、私が最近読んだおすすめ本を勝手に紹介させて頂きます。誰かの本選びの参考になれば幸いです!

阿部暁子さん『カフネ』

カフネ
カフネ』(阿部暁子/講談社)

本屋さんで惹かれて購入しましたが、とても勇気づけられる温かい物語でした。

“真面目一辺倒で頑固なアラフォー 薫子は、溺愛していた弟が急死したことをきっかけに弟の元恋人・小野寺せつなに出会う。やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。2人の出会いはお互いも、周りも変えることになり__”

帯に書かれた「一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。」
の文字通り、お腹が空く描写が多く、ご飯に丁寧に向き合いたくなります。後半は思わず涙しながらも、懸命に前を向いて生きようとする主人公たちを応援するうちにあっという間に読み終えてしまいました。

本屋さんでの出会いは一期一会、やはり至高ですね……!
皆さまがこの夏、素敵な1冊に出会えることを祈っております。

 

『私の居場所はここじゃない』

私の居場所はここじゃない
私の居場所はここじゃない』(安部若菜/KADOKAWA)

〈あらすじ〉
舞台は大手事務所主催のエンターテイメントスクール。3月にある事務所所属をかけたオーディションに向け、高校生5人はレッスンに励んでいた。
友達と一緒に応募したオーディションで特別に声をかけられ、成り行きでアイドルを目指すことになり、当たり前だった「青春」や友人関係に息苦しさを感じ始める莉子。亡くなった母の期待を背負い、結果を残したいと焦る、ダンスボーカルグループ志望の冬真。「子どもを産まなければモデルになりたかった」という母の言葉で将来の夢を決め、SNSの活動を頑張るモデル志望の美華。「普通」「真面目そう」と言われ続けてきたことにコンプレックスを抱き、「特別」になりたいと強く願う俳優志望の純平。いじめが原因で自ら芸能活動を辞めたが、もう一度自分の居場所を求めて入学を決意した、元天才子役のつむぎ。嫉妬や葛藤を乗り越えて彼らが最終オーディションの舞台に立つとき、どのような”光”を放つのか――。

<第2回に続く>

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