保険は入るほど損? 保険の専門家が言う、入るべき保険はたった1つ。自身の将来を見直せる1冊
公開日:2024/8/22
「将来の、まさかの時に備えるために」と思って加入した生命保険。入った時は必要だと感じていても、月々の支払いがかさむと、「少しでも負担を減らしたい」と思う人も多いだろう。そんな人に読んでほしいのが『この保険、解約してもいいですか?』(後田亨/日経BP)。加藤浩次さんとのYouTube動画で話題沸騰中の保険の専門家、オフィスバトン「保険相談室」代表・後田亨さんによる1冊だ。
本書は、後田さんのもとに保険の相談に来た40代の五十嵐夫婦との会話形式で進んでいくから、サクサクと読み進められるし、何より分かりやすい。子育て中の五十嵐夫婦は、終身保険や収入保障保険、学資保険、医療保険など、あらゆる保険に加入しているが、後田さんは言う。「保険は入るほど損」「入らないほどいい」。そして、五十嵐夫婦が入るべき保険は、たった1つだけなのだと言う。
いくら保険料を抑えたいとは思っていても、いざ「1つだけでいい」と言われると、不安に思うかもしれない。だが、後田さんの説明を聞けば聞くほど、その理由に納得させられる。後田さんによれば、そもそも保険は、保険会社側の暴利が疑われる金融商品。あるネット生保の開示情報を確認すると、医療保険・死亡保険・がん保険などの「保障目的」で、いわゆる掛け捨ての保険の場合、加入者が払った保険料の少なくとも4割以上が保険会社の取り分。つまり、「6万円弱の給付金を受け取るための権利を10万円の保険料を払って買う」ような構造なのだそうだ。
終身保険・養老保険・学資保険など、一定期間経過後に、まとまったお金が返戻金として戻ってくる保険もある。これらは主に「貯蓄目的」の保険だが、貯蓄なら、投資信託や国債といった保険以外の金融商品でもできる。むしろ、保険以外の選択肢を検討したいという。なぜかというと、保険の場合、手数料等の諸費用が高くて、お金が増えにくい仕組みになっているからだ。例えば、毎月、保険料を積み立てる終身保険や養老保険では、契約初年度は、保険料の大半が手数料等に消える商品も珍しくないそうだ。
「がん家系だから、がん保険には入っておきたい」「掛け捨ての保険って損な気がする」「今、保険を解約したら損してしまうのだけど」……。この本では、そんな疑問に、後田さんが次々と答えてくれる。特に、老後の医療費についての実態については驚かされてしまった。「今は問題なくても、老後の医療費が心配で医療保険に加入している」という人もいるだろうが、後田さんによれば、老後に保険は必要ない。厚生労働省のサイトにある「医療保険に関する基礎資料」によると、65歳以上の医療費の月々の自己負担額は高くても7000円未満。これは国の医療保険制度のおかげで、保険診療なら、自己負担は3割までで、高齢者になると、70歳以上は原則2割、75歳以上だと1割。さらには、「高額療養費制度」によって、個人の医療費の自己負担額には上限があり、例えば、年収370万〜770万円の場合、100万円の医療費がかかった時の自己負担額は8万7430円だ。国の医療保険はかなり手厚いから、医療保険で備える必要などない。やはり自己資金でまかなう方法を考えた方が良さそうだ。
「では、入るべき保険は?」——それは是非とも本書で確かめてほしい。「少しでも保険料を抑えられれば」と思って読み始めたが、この本に書かれているのは、目から鱗のことばかり。保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る後田さんだからこそ、どういう保険が有効で、どういうものは必要ないのか、徹底的に教えてくれる。きっと、今、加入している保険について、「かなり損をしてきたのかも……」と気付かされることも多いはず。あなたもこの本で、自分の保険を、将来への備えを見直してみよう!
文=アサトーミナミ