格差は子どもに連鎖する!? 「お金と社会の厳しい現実」を子どもに伝えるのを避けていると“負のループ”に…
PR 公開日:2024/8/21
ストーリー仕立ての本ではありながら、現実的かつ具体的な「お金」にまつわる話を分かりやすく学べるのが『中学3年生の息子に贈る、学校では教わらない「お金の真実」』(安田修:著、片桐了:マンガ・イラスト/Gakken)だ。
タイトルに「中学3年生」とあるが、対象は限らず「大人のあなた」にも読んでほしいと著者は訴えかける。「お金」とは何か、「働く」とは何か。はたまた「投資」とは何かと問う本書から、家族そろって学べることは大いにある。
お金の話を避けるのではなく向き合うのは大事
大学で経済学を専攻し、卒業後の15年間は生命保険会社で勤務。その後は独立して起業家となり、作家・コンサルタントとして活躍する著者は「最愛の息子と家族に伝えておきたいこと」を本書に記したという。
だからか、本書で描かれた架空の物語に登場する“信彦”になりかわった著者の言葉は、どこか優しい“父”の言葉として、すんなり染み渡ってくる。
世間では「大切なのはお金じゃない」「お金の話をするのは汚いことだ」と、ある種の“きれいごと”をつぶやく人もいる。しかし、そうつぶやくのは「お金がなくなることに対する恐怖感や嫉妬」があるからだと主張する。
誰もが「お金」は生活に欠かせないと気づいているはず。それでも、目を背けて生きる態度は「親から子」へと伝わり、ひいては「格差」が「遺伝」するという見解にも納得だ。「お金のことが苦手だから考えたくない→考えないからお金に困る→困るから苦手」という、いわば“負のループ”を避けるためにも、やはり、すべての世代が「お金」について真っ正面から向き合うべきと教えてくれる。
「良い大学→大企業」ルートが未だに優遇される理由とは?
人に雇われて「働く」のは、いわば「自分の時間を切り売り」するに等しい。それならば「同じ時間」を売るとしても「できるだけ高く売ったほうがよい」というのは、著者による教訓だ。
さらに、自分が「没頭できること」を仕事にするのも、稼ぐためには理想的だという。携わる分野で「高いスキル」を得られる可能性が高くなるからだ。ただ、「好きなことや得意なこと」で稼げるかは「需要」と「運」にもより、例えば、「芸術分野」の仕事といえば想像にたやすい。それでも著者は今後、AIがより台頭する時代では「需要と供給のバランスが大きく変わることもあり得る」と見通す。
ただ、高い給料を稼ぐことで考えれば、高学歴が優遇されるのは今の時代でも変わらないとする論も展開。勉強ができるから仕事もできるとは限らないが、複雑な問題にもあきらめず、努力して取り組んでくれるのではという期待からだという。偏差値重視が見直されているとはいえ、現実社会はまだまだその慣習が根強いというのを、理由も含めて丁寧に解説している。
そして、稼いだ分は「投資」へとまわすのをすすめている。一例にあげるのは「株式投資」で、一部で広がる「好きな会社を応援する気持ちで株を買おう」という意見にはまどわされず冷静に、慣れないうちは「よい会社の株は高く、悪い会社の株は安い」として、長期的には株価が上がると信じ「買ったら、絶対に売らずに一生持ち続ける」と貫くのがよいという。
投資手法も様々だが、本書から一つ紹介しておきたいのは「ドルコスト平均法による分散投資」だ。端的には「上場投資信託(ETF)」を活用し「株だけではなくて不動産や債券」などへ投資して「一生持ち続ける」だけの手法だ。具体的には「毎月、決まった金額で買う」とルールを決めるだけでいい。投資のスタートに決まりもなく、思いついたら「今すぐ始めるべき」とする著者は、若いうちに始めればそれこそ「人生の後半」で大きな効果が出ると念を押す。
愛をもって「息子」に捧げた著者による「お金」にまつわる1冊。しかし、その内容はいずれも普遍的だ。本書ならではの家族愛がにじむストーリー仕立ての展開も読みやすく、身近な人にも“読んでほしい”とすすめられる書籍だ。
文=カネコシュウヘイ