人気ゲームクリエイター・まだら牛×異才・手代木正太郎の最凶エンターテインメント! 都市伝説をめぐるTRPGのシナリオをベースにした“濃密”な小説版『新約・コトリバコ』
公開日:2024/8/20
都市伝説「コトリバコ」を題材にしたエンターテインメント小説『新約・コトリバコ』(まだら牛:原案、手代木正太郎:著、ヨタロー:イラスト/KADOKAWA)が、2024年4月に発売された。
原案のまだら牛氏は、TRPG(Table talk Role-Playing Game)のヒットメーカーとして知られる人気クリエーター。氏が手掛けたTRPG版のシナリオ『新約・コトリバコ』をベースに、作家の手代木正太郎氏が濃密な描写で作品世界を掘り下げている。
物語の舞台は二〇××年の日本。日本近代以降最悪の呪物と悪名高いコトリバコをテロリストに強奪され、その奪還任務を託されたのは特務部隊「異形厄災霊査課(イヤサカ)」だった。山陰・島根県沖の洋上に浮かぶ「八八式研究所」へ潜入した隊員たちは、この事件の奥底にある想像を絶する怪異的陰謀を知ることになる――。
原案であるTRPG版『新約・コトリバコ』のシナリオは、まだら牛氏が「1回のセッションでシナリオの全貌が明らかになる可能性は非常に薄い」と語るほどの広がりとポテンシャルを持つ。その広大で謎めいた物語世界を、手代木正太郎氏が怒濤の筆致とディテールで埋め尽くしていく。こうして生まれたのは、読む物に圧すら感じさせる“濃密さ”であり、それがノベライズ版の大きな魅力となっている。
そもそもTRPGというジャンルは、同じシナリオをプレイしたとしても、セッションごとに異なる展開を見せる。物語をコントロールするDL(ディーラー)と呼ばれる進行役、その役になりきって思考と行動を決定するPL(プレーヤー)たち、生身の彼らの間で交わされる臨機応変なやりとり、そしてダイスの目という運命のいたずら。そういった様々な要素の掛け合わせが、物語に無限の広がりをもたらしている。シナリオという枠組みは同じでも、その枠組みの中でのストーリーラインは、セッションの数だけ、プレーヤーの数だけ存在する。このたび発売されたノベライズ版『新約・コトリバコ』もまた、数多くあるストーリーラインのひとつとも言えるのかもしれない。本書の読書体験は、まだら牛氏×手代木正太郎氏の強力タッグがDL、読者である私たちがPL、という極上のセッションなのだ。
ノベライズ版ではTRPG版のシナリオをさらに深掘りし、各キャラクターのバックグラウンドや心情などを詳細に描写。アクションシーンやノベライズ版のオリジナルキャラクターも加わり、エンターテインメントとしての読み応えを十二分に感じる作品に仕上がっている。
TRPG版『新約・コトリバコ』をプレイ済みの人にはもちろん、TRPG自体が未体験という人にもおすすめしたい一冊だ。