「公安の怪物」がペット探し!? 探偵に転身した元公安捜査官。彼に迫る“黒幕”の謎――漫画『ベアフェイス ~公安を去った男~』
PR 公開日:2024/8/23
警察組織を題材にした作品はスリリングな展開だけでなく、個性的なキャラクターの活躍からも目が離せない。
『ベアフェイス ~公安を去った男~』(狛犬はやと/少年画報社)も、まさに王道の本格派な警察漫画だ。本作には、公安を離れて探偵となった男の熱い生き様が描かれている。
選ばれた警察官しかなることができない、公安警察。その中でも、歴代最強と恐れられたのが、斑鳩(イカルガ)。彼は“公安の怪物”と呼ばれ、数々の歴史的事件を解決に導いてきた。
だが突如、公安を辞め、探偵に転身。その理由は、「人から表立って感謝されたい」というものであった。かつてはすべての悪から恐れられていた男は、ペット探しや落とし物探しの依頼をこなす日常を送るようになったのだ。
取材を申し込んだ新聞記者の佐野は、変わってしまった斑鳩の姿に落胆。だが、斑鳩はそんな佐野に、国民の日常を守り、公安にいた時には見えなかった景色を大事にしたいのだと、今の素直な想いを告げる。
斑鳩が抱く、この国への熱い想いは公安にいた頃と変わっていない。そして、公安に戻る気もないのだ…。そう感じた佐野は、斑鳩の意志を警察組織に報告する。
実は佐野、本名は柏木といい、警視監に命じられて斑鳩を調べていたのだ。任務は、斑鳩を公安に戻るよう、誘導すること。警視監は公安に戻る気がない斑鳩の意志を知り、彼を処分すべきと判断する。
だが、柏木は斑鳩を連れ戻すことも処分することも必要ないと主張。他人からの「ありがとう」を聞き、ようやく自分の存在価値を見出せた斑鳩の心を思ったからだ。
しかし、上に歯向かったことで絶体絶命のピンチに。すると、そこに予期せぬ救世主が登場。なんと、柏木の正体に気づいていた斑鳩が命を救いに来てくれたのだ。
こうしてピンチを乗り越えた柏木は、斑鳩の探偵事務所で働くことに。2人はバディとなり、公安の高度な尾行術を駆使して浮気調査をしたり、鍛え上げた鋭い洞察力で依頼を解決したりと大活躍する。
特に斑鳩は身体能力もズバ抜けており、1巻には身を挺して、トラックに轢かれそうになった調査対象者の命を守るシーンも。シリアスな展開だけでなく、こうしたアクロバティックな描写にもハラハラさせられ、続きを早く知りたくなってしまうのも本作の醍醐味だ。
また、斑鳩というキャラクターが実に魅力的であることも、本作から目が離せない理由のひとつである。小さな依頼にも真摯に向き合う斑鳩は一見、「いい人」のように思えるかもしれないが、感謝されることに固執するあまり、他人に「ありがとう」を強要することもある変わり者だ。
完全無欠のヒーローではなく、歪んでいる部分もあるため、非常に人間臭く、このキャラクターの生き様を見届けたいと思ってしまう。
そんな斑鳩は1巻のラストで公安捜査官からの奇襲を受け、大きな黒幕から命を狙われていることが明らかとなる。
ざっくりとしか明かされていない斑鳩の過去には一体何があり、真の敵は誰なのか。そして、斑鳩が語る“公安を去った理由”は本音なのだろうか。そうハラハラしながら、公安を去った男の行く末を見届けてほしい。
文=古川諭香