数学の本なのに2ページに3回笑える!? ページ数<ギャグ数の『たぶん世界一おもしろい数学』で、楽しみながら中学数学をマスター

文芸・カルチャー

PR 公開日:2024/8/29

たぶん世界一おもしろい数学
たぶん世界一おもしろい数学 上巻』(ソウ:著、本丸諒:協力/Gakken)

 小学生の頃は算数が好きだったけど、中学生になって算数が「数学」になった途端、急に難しくなり、そのまま嫌いになってしまった……。

 そういう人はけっこう多いのではないだろうか(この文章を書いている私もそうです)。大人になり、数学を勉強せずとも済むようになったらなおのこと、数学から遠ざかったままでいることだろう(私がそうです)。そんな数学嫌いの大人たちに、数学の楽しさ、おもしろさを伝え直してくれる本『たぶん世界一おもしろい数学 上下巻』(ソウ:著、本丸諒:協力/Gakken)が発売された。

 数学が苦手な中学生ハジメの前に現れた、忍者学校高等部のジョー。ハジメの数学の成績を上げるため、ジョーは得意の忍術を使って計算式を教えたり、様々な図形について説明したりする。「正負の数」や「文字式」から始まり、下巻では「平方根」に「三平方の定理」まで、上下巻で中学数学をまるっと扱っている。

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 手がけたのは、心療内科の病気について分かりやすく解説した『マンガで分かる心療内科』(ゆうきゆう:原作、ソウ:作画/少年画報社)シリーズで大人気を博しているソウさん。専門的な分野を一般人にも理解できるよう丁寧に、かつ笑いをちりばめて伝えるやり方は本書でも健在だ。

 先生役でありながらボケのジョーと、そんな彼に的確なツッコミを入れるハジメ。数式の解説などの合間を縫うようにして、絶妙なタイミングで笑いが挟み込まれてくる。

たぶん世界一おもしろい数学(P113)

 こんな本を書くのだから、てっきり作者は数学が得意だったのかと思いきや、反対にソウさん自身も数学は苦手だったそう。自分と同じく数学嫌いのまま大人になってしまった人たちが楽しく学び直せるよう、一から数学を勉強し直して本書に取り組んだという。だからこそ、数学という学問が本来もっている「おもしろさ」を楽しめるような趣向が随所に凝らされている。

 例えば「-(マイナス)」の意味とは“反対の性質”であることを、文章に加えてギャグ演出も使って説明し、

たぶん世界一おもしろい数学(P22)

たぶん世界一おもしろい数学(P23)

 数字や文字のかたまりの「項」のことは、“同じ〈印〉を刻まれし者”という表現を使って解説。

たぶん世界一おもしろい数学(P64)

 ときにはマンガならではの手法で、x軸とy軸があわさった座標軸を描いている。

たぶん世界一おもしろい数学(P98)

 するとあらふしぎ、文系脳である人たち(私です)でもすんなりと受けとめることができる。一つ一つの話のなかで学ぶ内容が詰め込まれ過ぎていないのも、ありがたい。ほどよい“難しさ”が読む側の好奇心をずっと引きつけ続けて、気づいたらページがどんどん進んでいっている。

 数学にまつわるコラムも多数掲載されている。担当したのは『すごい統計学』(飛鳥新社)をはじめ、理系のテーマを文系向けに噛みくだいて書く技術に定評があるサイエンスライターの本丸諒さん。アルキメデスやピタゴラスなど有名な数学者の知られざるエピソードや、ビジネスシーンで円グラフを使用する際の注意点といった興味深いコラムが、上下巻あわせて17本も収録されている。

 算数は好きだったのに、数学が苦手になってしまった人。大人になった今だからこそ数学を学び直し、そのおもしろさと出会い直したい人。そんな人たちにぜひ手にとってみてほしい。上下巻を通して読むと、確実に中学数学を理解している自分を発見するだろう。

文=皆川ちか

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