「今度の人生では家族を救う!」と意気込むも、2度目の人生はイージーモード!? さらに、最愛の人と運命の再会し…
PR 公開日:2024/9/18
ループした世界で破滅回避のために奮闘するのかと思いきや、あらゆるフラグが消滅していく!? 復讐劇をにおわせる序盤と、新たな展開を迎えてからのギャップが実に楽しい。
そんな『鉄の女だと嫌われていたのに、冷徹公爵にループ前から溺愛されてたって本当ですか?』(赤羽チカ:作画、クレイン:原作/スターツ出版)は、人気著者・クレインによる小説が原作。原作は「幸せいっぱいで涙が出る」…そんな感想が寄せられるほど、圧倒的な読後感が話題となっている。もちろん、コミカライズ版でもその魅力は健在だ。
「鉄の女」と呼ばれる冷静さで、レナート公爵の秘書官を務めるヴィクトリア。幼い日に天涯孤独となった彼女は、自分に手を差し伸べてくれたレナートを支えることに全身全霊を捧げていた。
そんなヴィクトリアは、何者かに銃弾で狙われたレナートをかばい命を落としてしまう。やがて意識が遠のき目を覚ますと、12歳の頃の自分に戻っていて…。
こうして主人公が時間をさかのぼり、いわゆる「復讐もの」を彷彿とさせる展開が始まっていく。
ヴィクトリアの生きていたループ前の世界では、自分以外の家族は反逆者の汚名と共に処刑され、さらにレナートを狙った銃弾の製造にヴィクトリアの親族が関わっていた。
愛する人たちを二度と不幸な目にあわせぬよう、歴史を変えよう。この先に起こるであろう様々な不幸の芽を摘むべく、ヴィクトリアはループ後の世界で奮闘することを誓う。
自分がループしている意味を、「家族を救うこと」「レナートへ迷惑をかけないこと」と定義づけるヴィクトリア。その姿はとてもたくましいが、物悲しい。だってそこには、彼女自身の幸せがないのだから。不幸にならない道を辿るためだけに生きなおす。それはきっと、辛い道のりだろう。
切なく苦しい復讐劇がいよいよ始まっていくのかと思いきや、本作はここからガラッと雰囲気が変わる。
やがてループした世界の時は流れ、ヴィクトリアはある異変に気づく。自らがなにか行動をおこさずとも、予想していた不幸な事態は起こらない。まるで、不思議な力に導かれているかのように…。
救済のためにループしたはずなのに、そこに情熱を捧げずともよくなってしまった。それなら自分の2度目の人生にはどんな意味があるというのだろう?
そこでヴィクトリアが願ったのは、レナートへの恋心の成就だった。なんとかしてもう一度レナートに出会えないだろうか。彼女は努力を重ね、ついにレナートとの再会のチャンスを掴むことになる。
隠し通してこそいたが、ヴィクトリアはレナートのことを深く愛していた。彼のために命を落とすこともいとわないほどに。そんなヴィクトリアの大きな愛は、レナートに伝わっていたのだろうか。それはもう知る由もないが、今度こそ彼女の美しい恋心がほんのひとかけらでもレナートに届いてくれと願う。
こうして物語は、救済から時を超えたラブストーリーへ。不幸な運命を生きた女性の、本当の人生のやり直しが始まっていく。
不幸ながらも健気でまっすぐに生きるヴィクトリアのキャラクターにすっかり魅了され、2度目の世界での幸せを応援したくなってしまった。読者の感情を動かす巧みな構成がすばらしい。復讐劇からの転換も、意表を突かれたようで思わず釘付けになる。
しかしラブストーリーは嬉しいけれど、なんだかやけに遠回りしているのでは?と感じる方もいるはず。それにタイトルを飾っている“溺愛”だって、なんだか物足りないような…。
そんな疑問を解消する鍵は、ヴィクトリアの時間が巻き戻った理由に隠されている。
この巻き戻しには壮大な秘密があるのだが、それが分かるのはもう少し先のお話。その秘密を知れば、序盤の切ないエピソードの裏にあるもうひとつの意味が見えてくるはずだ。
コミカライズ版第1巻は8月23日に発売されたばかり。ぜひ今後のめくるめく展開を楽しみに、まずは運命的な再会を果たすまでのヴィクトリアとレナートの姿を追いかけてみてほしい。